CASIOの熱意を感じるレストアイベント
こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!
今回は、ついに完了したCASIOのG-SHOCKレストアサービスについて書いていく。
結果としては、CASIOの熱い思いが伝わってくる素晴らしいイベントであった。
1990年代のデジタル時計ブームを牽引したといっていいいG-SHOCK。
その衝撃的なCMや映画での使用とともにプレミアがつくほどの大ブームとなった。
だが、そんな頑丈な印象のG-SHOCKも経年劣化には耐えられなかったのだ。
その自慢の耐衝撃性は樹脂と金属を交互に折り重ねることで実現されていた。
そして、一番外側の樹脂は、空気中の水分を含み長い時間が経つと分解してボロボロになってしまう。
これは使用状態や保管状態の差はあれど、高温多湿の日本においては避けられない現象だ。
上の写真を見てもわかる通り、基本的にはベゼル部品の新品交換しかないという状況である。
だが、G-SHOCKという時計の性質上、長く使い続けるという概念はなかっただろう。
部品は欠品となり、現在まで修理不可能であるのが現実である。
本ブログでも過去何度かベゼルの加水分解と部品欠品での代替案について記事を書いてきた。
結果としては、満足のいく結論は得られないでいた。
しかしながら2021年秋、ついにCASIOからG-SHOCK復活イベントが打ち出された。
長くG-SHOCKを愛してくれているファン向けに、光造形型による部品の限定生産と交換作業をやってくれるというのだ。
私もここぞとばかりに申し込みを実施した。
もの凄く長い手続きを終えて現物をCASIOに送付した。
そして、待つこと3か月、ついに2022年1月レストア対応品が返ってきた。
その出来栄えは、圧倒的な情熱を感じるオーラの漂う逸品となって帰ってきた。
個人的に、本イベントは利益なしか、赤字ではないかと思うくらいの内容だ。
ひとつずつ手作業で対応
本レストアイベントの方法は、とんでもない内容になっている。
本来樹脂部品というのは、金型といわれる型に樹脂を押し込んで形を成形する。
その作業を連続して行うことで、大量生産と品質の安定を可能にしている。
今日、G-SHOCKが驚くほどの価格で購入できることは、この生産技術の進歩に他ならない。
しかし、本レストアイベントでは金型は再製作しないという。
あくまで今回限りの対応なのだ。
方法は金型ではなく、受注対応で光造形型を用いてベゼルを製作するというのだ。
光造形とは3Dプリンティング製法の一つである。
光硬化樹脂にレーザー光を照射して、数十分の1mmずつ樹脂を凝固させる。
それをミルフィーユのように積み重ねることで樹脂形状ができあがる。
しかし、それで出来上がりではない。
ミルフィーユ上の立体造形物は層の分だけ段差が存在するのだ。
1cmの厚みを0.1mmずつ積んだとしても100段もの段差が存在する。
これをさらに削り出して曲面を作り込んでいく。
そうしてできた光造形型に樹脂を流し込んで成形していくのだ。
当然金属と比較するとその強度は推して知るべしといったところ。
その強みは初期投資が小さく済むことである。
まあ、受注する数量がわからないので、企画としては、光造形型が最適解ではあると思う。
正解は結果論でしかわからないが、想定数量を超えた場合は金型がコスト、品質、納期的に有利である。
そして、光造形型は金型と比較して耐久性がないため、対応ショット数が少ない100~1000くらいだろうか。
当然、いくつかの光造形型の準備が必要となる。
そして、その光造形型ごとに手作業時の個体差ができてくるのだ。
そのため、型ごとにテストショットと調整を行うことになるだろう。
さらに成形した樹脂部品も丁寧に検品、調整する必要が出てくる。
考えただけでも、もの凄い手間と時間がかかるプロジェクトだ。
まあ、受注数量は10万いかないだろうという見積なのだと思う。
実際はどうか わからないが予定数量に達したら終了といったところか。
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広告量産品とは異なる気合が漂う
そう、そんな風に作られたものであるため、完成品には異様なオーラが漂うことになる。
うまく表現できないが、人の手をかけた分だけそのモノには迫力が出るものである。
工業製品よりは工芸品に近い雰囲気だ。
神は細部に宿るというように、訴えかける何かがあるのだ。
私は個人的にこの感じが好きでたまらない。
工業製品でなく、芸術品でもない。工芸品の雰囲気が好きだ。
そんな雰囲気をまとった素敵な時計となって帰ってきた。大満足である。
ここまでの情熱を注げるプロジェクトメンバーに感謝したい。
熱い思いとメッセージ
届いた箱はさして高級感はなかったが、中には熱いメッセージが刻まれていた。
G-SHOCKマニアの時計への思いを受け止めるかのような内容である。
当然であるが、製作側の思いと熱いファンの気持ちは常にすれ違うものである。
なんというか、同じ製品でも見ているものが違うのだ。
熱いファンの方は愛に満ち溢れ、製品への思いと妄想を積み上げていく。
しかしながら、製作側はシビアにかつ冷静に各部を数値化して接することになる。
ファンにしてみれば大事な時計かもしれないが、製作側から見れば欠点だらけで新製品で置き換えたい時計かもしれない。
というか、細部の設計を見る限り多分そう。
まあ、ガンガン使うことこそがG-SHOCKの使い方であるので、書いてある通りに思い出を積み重ねていく。
こんなイベントを実行できるCASIOは素晴らしいメーカであると思う。
今一度、プロジェクトメンバーとその関係者に感謝を伝えたいと思う。
今後もメンテナンス情報を伝えていくのでよろしく、それではまた。
まとめ
- 素晴らしいレストアイベント
- ただならぬ空気感が漂う
- カシオの熱い思いが伝わる