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SEIKO cal.7622C チャンピオン860のメンテ

何かかっこいいぞチャンピオン860

こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!

今回はチャンピオン860をメンテナンスしていく。

何気なく手に入れたが、なんかかっこいい外観である。

このころになると、どうやらムーブメントよりも外観デザインにコストをかける方針のようだ。

それは現代のコンセプトにも通じるものである。

ムーブメント自体は完全汎用、量産型のように見える。

構造も単純になり、裏蓋とリューズを外せばムーブメントがスルッとケースから出てくる。

チャンピオンはもともとクロノスの普及版として誕生したが、本機はほぼ別物になっている。

派生ムーブメントがアルピニストなどに使われていることから、スポーツ系のムーブメントなのだろう。

ダイバーを含むスポーツ系のムーブメントは壊れても交換できるようコスト重視の設計であるようだ。

ちなみにアルピニストのレストアも行ったので、そちらも参考にしてほしい。

そうはいってもさすがに歴史を感じる

機械式手巻きムーブメントとしては比較的新しいとは言ってもそれなりのダメージが蓄積されている。

まあ致し方ないが、文字盤周りはやや錆が回っている。

ある程度針を揃えたら、剣抜きで抜いていく。

文字盤に傷をつけないように薄いビニールなどで養生するとよい。

針が取れた状態、植字の文字盤も現在では少ない仕様である。

続いて文字盤を外していく。先にスペーサリングを外すため、アクセスは裏面から行う。

やや大きめのネジでスペーサリングが固定されている。2か所緩めて取り外す。

スペーサを取り外すと文字盤を固定してるネジにアクセスできる。

側面向きに変な方向に飛び出しているネジがそれだ。これも2か所ある。

なぜこの方向なのかはよくわからないが、見やすい位置ではある。

文字盤の干支足を壊す事例が絶えなかったのであろうか。

文字盤を外すと洗練されたカレンダー面が現れる。

無駄のない感じで好感が持てる。

中央の歯車は時針を回している。特に固定はないので上に引き抜けば抜ける。

謎の銅スペーサを紛失、変形させないよう注意する。

あらに中央に分針を回している歯車、ツツカナがあるのでこちらも抜いていく。

こちらは2番車に圧入されているので、引き抜くのが難しい。

私は、剣抜きを利用して抜いている。

カレンダーのおさえ板を外した状態。

この状態では多くのパーツがボロボロと外れてしまうため、注意してい作業する。

どこにあったかわからなくなったら、この画像を参考に組みなおせばよい。

特にカレンダーリング下側のアームを押し出しているバネは紛失すると、まあ見つからないので注意してほしい。

こんな感じでバラバラと外れていく。まあ、カレンダー側はこのぐらいでいいだろう。

いよいよムーブメント側を分解していく。

派手さはないが、質素でいい機械であると思う。

ゼンマイ動力が抜けていることを確認したら、角穴車を取り外す。

軸が四角なので角穴車と呼ばれている。

こちらは、ゼンマイを巻き上げるための歯車なので、大きくなっている。

トルクは大きいが、回転数は少ない歯車だ。

機械式時計の回転物はトルクと回転数を意識しながら取り扱うと失敗が少ない。

比較するとトルクが弱く、回転数の多い回転物ほど繊細にできている。

プレートを外すと、1番車(香箱)が出てくる。

この中に動力であるゼンマイが収められている。

最もパワー感にあふれた歯車である。こちらのトルクを加速してテンプまでが稼働している。

続いて真ん中の輪列を固定しているプレートを外していく。

これで3番車と4番車とが取り外せる。

だいぶばらけてきたので、いよいよ親玉であるテンプASSYを外していく。

この部品が機械式時計で最も繊細な部品となるので細心の注意で取り扱おう。

特にヒゲゼンマイという渦巻き型のバネは簡単に破損する。

このあたりから謎の動きをする部品、アンクルとガンギ車が見えてくる。

これがアンクルである。Y字型をした先端にルビーの爪が埋め込まれた部品だ。

こちらが往復運動をして、一時的に秒針を止める。

このムーブメントは5振動なので1秒間に5回一時停止していることになる。

あまりに不思議な歯車がガンギ車だ。先ほどのアンクルとかみ合って、時計の進みを止める。

ちなみに止めたり動かしたりするタイミングをとるのが、先ほど外したテンプASSYである。

大げさに言うと、このテンプASSYによってのみ時計の精度は決まる。

高い時計だろうと安い時計だろうと機械式時計においてこの基本は変わらない。

2番車まで外したらおおよその分解は完了だ。

分解した部品は劣化したオイルなどを洗浄するため、超音波洗浄機にかける。

ただし、劣化した接着剤やクラックの入ったルビーは容赦なく砕けるので注意すること。

個人的に私はアンクルについては超音波洗浄に入れないことにしている。

時計師によってはここを調整する輩がいるからだ。

間違ってるとまでは言わないが、あまりお勧めの方法ではない。

洗浄した部品の回転軸にオイルをさして組み立てていく。

組立手順は基本的に分解手順の逆で大丈夫である。

2番車とガンギ車をセット。

アンクルを固定。

この時軸が確実にはまっていることを確認してから締め付けること。

手ごたえのあるまで、根気よく実施しよう。

軸が嵌まっていない状態で締め付けると軸が破損する。

注意深くテンプASSYを組み付ける。

この時テンプがゆらゆらと回転することを確認する。

ここで回転しないようなら、正しく組めていないか、寿命を向かえているか、破損しているか、オイルの塗りすぎかのどれかであろう。

根気よく丁寧に組立よう。

組みあがったムーブメント。

実に美しい。美しいといっても機能美を感じさせる美しさだ。

ケーシングして組立完了。

風ぼうも磨き込むことで輝いて見える。実にかっこいい時計である。

このような魅力を持つ時計は昭和だからこそといえる。

そんな魅力的な昭和SEIKOを大事にメンテナンスして使っていこう。

今後もメンテナンス情報を伝えていくのでよろしく、それではまた。

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※他機種のメンテナンスのリンクはこちら

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