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SEIKOマーベル赤機械の組立

分解した部品を洗浄して汚れを落とす

こんにちは、今回も元気にメンテナンスしていこう。

今回は、セイコーマーベルの組み立てを行う。

初めて、組み立てを行う場合は、コツがつかめず難しいと感じるだろう。

しかし、繰り返し作業し慣れることで、だんだんとできるようになる。

まずは、力を入れすぎず、正確かつ慎重に作業することを意識しよう。

練習に最も適した機種は、セイコーのクラウンであるが、最近は数が減ってきている印象がある。

そのため、セイコーチャンピオンやスポーツマンあたりが手に入れやすいだろう。

機械式時計の不動の原因は多々あるが、大抵は長年の放置による油切れだ。

超音波洗浄機で長年の汚れ、古い油を振り落とし、新しい油を注油する。

そうすると、部品の破損や摩耗がなければ大抵は稼働する。

原因と感所としては別途記事に記載したので、参考にしていただけると嬉しい。

では早速作業を始めていく。

まずは分解した部品を超音波洗浄機で洗浄、部品の汚れや油分を取り除く。

この時点で、不動の原因のほとんどを取り除くことができる。

同時に回転軸受けのルビーにヒビなどが入っていると割れる場合がある。

その時は、修復は困難となるので、部品に破損がないことを祈るのみだ。

ちなみに私の場合は、アンクルは超音波洗浄しないことにしている。

過去に先端爪のルビーが外れたり、割れたりと大変な思いをしたからだ。

最初からヒビが入っていたかもしれないし、接着剤が劣化していたかもしれない。

まあ、一種のトラウマのようなものだ。

回転部と摺動部に注油する

各部品を洗浄、乾燥をした後に、回転軸と摺動部に注油していく。

4番車以降は回転トルクが小さくなるので油の硬度と量に注意する。

注油のオイルの量や硬さは、。

なぜ、オイルの硬さや量が重要かというと、オイルの硬さや量が無視できない箇所があるからだ。

具体的には、テンプとアンクル、ガンギ車くらいまでは、かなり繊細なトルク管理が必要になる。

逆に1番車や2番車は、グリスくらいのものでも問題なく回ってしまうほどのトルクがある。

別の記事で簡単にトルク計算をしたものがあるので、興味のある方は斜め読みしていただきたい。

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組み立ては根気よく慎重に行う

ムーブメントの一番奥にあるのが2番車であるのでこちらを設置する。

これは比較的大きな部品であるので、組み立ては簡単だ。

現時点ではおいておくだけでよい。

続いてアンクルを設置する。

これが実に特徴的な部品である。

ガンギ、アンクル、テンプはとても重要な部品なので、取り扱いに注意する。

これも置いておくだけでOKだ。

その形状から回転中心がつかみにくいので、ゆっくりと慣れていこう。

アンクルをプレートで仮固定する。

この時、アンクルがスムーズに首振りすることを確認してからネジを本締めする。

軸が嵌まっていない状態で無理にネジを締めつけるとアンクルの軸が破損する可能性がある。

この辺の軸が嵌まったかどうか確認する作業に慣れが重要になってくる。

機械式時計は、基本構造こそ単純だが、その大きさと工作精度が非凡である。

これこそが、機械式時計のコストの要因の大部分である。

これに、高級構造材料を使用し、生産数量を絞り、装飾材料の追加、複雑な構造の選定を行えば、家のような高級時計の完成となる。

そう、分解、組立して構造を確認すれば、必要最低限の適正な価格が見えてくる。

ステンレス材料をメインとし、適切な生産量で高級装飾なし、単純構造を選択、高精度部品を丁寧に組立。

これに手厚いアフターサービスを加えると機械式グランドセイコーができあがる。

ロレックスのベースラインもある程度同様のコンセプトである。

さらに圧倒的な生産技術をつぎ込んでコスト削減したものが、現在のセイコー5ラインといったところだ。

違いとしては、それだけである。

カタログ上の精度の違いなど、一般消費者には無縁のレベルである。

1000万円の時計であろうが、セイコー5であろうが、時計の精度が日差±1分以下であれば実用的な差はないといっていい。

ある程度、頑張って時計を購入する際は、どの部分に代価を支払っているのか理解するとよい。

いくら高級な時計であっても、セイコー5であっても精度や耐久性自体に実用レベルでの差は存在しない。

そのくらい、セイコー5がよくできている。

または、機械式時計のポテンシャル自体、その程度が限界であるといえる。

話はそれたが、組み立てを再開しよう。

変な形のガンギ車を設置する。

これもこの時点では置いておくだけだ。

2番車を固定するプレートを取り付ける。

これも軸が嵌まったことを確認する必要があるが、比較的大きいので問題はないだろう。

本当に部品の工作精度は、昭和の量産品とは思えないほどのレベルである。

ちなみにそれは現在においても変わらない。これほどの工作精度の量産品は驚異的である。

これが一般消費者に伝わらないところが実に惜しい。

時計師はその品質の違いを肌で感じることができるだろう。

ヒゲゼンマイの破損に注意する

いよいよに最重要部品であるテンプASSYの組付けである。

ヒゲゼンマイを破損、変形させないよう慎重にテンプを設置する。

仮組みした時点でテンプが滑らかに振れることを確認する。

この時、テンプの動作に問題がある場合は、軸が嵌まっていないか、部品が摩耗、破損している。

テンプとは時計の振り子であり、精度を司っているものだ。

オーケストラや吹奏楽でいうなら指揮者だ。

このテンプのタイミング、指示に従って、時計の部品たちは針を進めていく。

そして、最も稼働量と速度が大きいのもこのテンプである。

さらに、駆動トルクが最も小さく、ほとんど慣性で稼働している部品だ。

過去の機械式時計の歴史を紐解くと、この部品周りに涙ぐましい努力が注がれている。

その中でも最たるものがヒゲゼンマイと呼ばれる渦巻き状のバネである。

こればかりは、ごまかし、調整がほどんど効かないので、地味だが最重要部品である。

この部品のばらつきに合わせて、ヒゲゼンマイの固定部を調整して、精度を追い込んでいく。

テンプASSYについている「F⇔S」というのがそれである。

この表示針の先端を「F」に近づけるとヒゲゼンマイ有効長さが短くなり進みが早くなる。

逆に表示針の先端を「S」に近づけるとヒゲゼンマイ有効長さが長くなり進みが遅くなる。

これは各部品のばらつきによる誤差を吸収するための機構であり、せいぜい±3分以内の調整が限界だ。

この調整範囲を超える誤差がある場合はテンプ周りが破損している可能性が高い。

輪列を組立する

テンプが正常動作なら大きなヤマは越えたといっていい。

1番車(香箱)と3番車を設置する。

香箱は、中にゼンマイが内蔵されている動力車だ。

すべての歯車の中で最大のトルクがかかる歯車なので、大きく頑丈である。

この1番車の動力を加速させて時計の針を回している。

電池式時計との大きな違いがこの動力部分である。

ゼンマイはその構造上、巻きあげるとそこに動力をチャージできる。

巻き上げ動作のみで、気軽に再チャージできることから、動力を贅沢に使用できる。

結果として、針を回すトルクを大きくすることができるため、比較的大きな歯車や重い針を回すことができる。

3番車は、2番車と4番車をつなぐ加速用の中継歯車だ。

同時に、ガンギ車を通じてテンプのタイミングでストップ&ゴーを繰り返している。

秒針を回す4番車を設置する。

こちらの歯車は、かなり繊細な部類に入るので、軸を曲げないよう注意すること。

輪列を固定するプレートを取り付ける。

ネジ締め付け前に3つの歯車の軸が軸穴にはまっていることを確認する。

無理に締め付けると歯車の軸やルビーが破損する危険がある。

4番車に軽く触れて空回りするようなら、どれかの軸が嵌まっていない。

4番車に軽く触れて、テンプが振れるようなら、正しく組めている可能性が高い。

ここにも多少コツと慣れががいる。

大抵は、設計年が新しいものほど嵌まりやすくなっている。

正しく作業するなら、伏石と呼ばれるルビーの組み付けは最後だろう

しかし、どちらかというとルビーを固定するほうが軸を嵌めるより難しい。

そのため、今回は直接組立している。

1番車(香箱)を固定するプレートを取り付ける。

角穴車を取り付けネジで固定する。

以上でムーブメントのメイン部分の組み立てはほぼ完了だ。

組み立ての仕上げを行う

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ムーブメント組み立ての仕上げとして、文字盤側の組み立てを行う。

2番車の軸にツツカナと呼ばれる分針を固定する歯車を圧入する。

パチンとはまり、歯車がかみ合っていることを確認する。

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時針を回す歯車を設置する。ここまでで、ムーブメントの組み立ては完了だ。

リューズを回しゼンマイを巻いてテンプが稼働することを確認する。

稼働が確認できたら、リューズを1段引き出し時刻調整ができることを確認する。

この稼働の瞬間は何度見ても最高に気持ち良い瞬間だ。

本機も問題なく稼働が確認できた。

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ムーブメントに文字盤の干支足を差し込む。

ムーブメント側面の文字盤の固定ネジ2か所を締め付け、文字盤を固定する。

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ケースにムーブメントをはめ込み裏蓋側からネジ2か所で固定する。

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文字盤側に時針、分針、秒針を圧入する。

この時、12:00の位置に圧入するのがわかりやすい。

次にリューズを引き出して、時刻調整を実施し、問題ないことを確認する。

針同士がぶつかったり、文字盤に干渉しないことを確認する。

こちらの作業が甘いものを多く見かけるので注意すること。

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以上で時計の組み立てが完了した。最後に外観の磨き込みを行う。

外観を磨き込む

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せっかく中身をきれいにしたので、次は外観を可能な限りきれいにしていく。

ここで注意することは、新品を目指さないことである。

新品を目指すくらいなら、新品を買ってしまうほうがはるかに簡単だからだ。

できることは、やすり掛けして磨きこむことくらいだが、根気よくやっていく。

やり方自体は簡単だ。

紙やすりの400番程度のもので大きめの傷をならす。

1000番程度のもので磨きこむ。

1500番程度のものでさらに磨きこむ。

コンパウンドで磨きこむ。

これをより細かい番手まで実施することで輝きが増すが、やりすぎてもよくないのでほどほどにしよう。

写真では、組み立て状態で行っているが、風防とケースは分解状態で磨きこんだほうが良い。

また、ケースについてはエッジ部分を立てるように削り込むとかっこよくなる。

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ヤスリがけが完了した状態。

風防が曇ったような外観になるが、次のコンパウンドでの磨き込みで、曇りはなくなるので心配はいらない。

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最後にコンパウンドでケースと風防を磨き込むと輝きが復活し、宝飾品のような輝きを発する。

これは新品とは違う深みのあるオーラを放つ。これがアンティークの持つ最大の魅力である。

好みのベルトに付け替えて身につけよう。

マーベル以降セイコーのムーブメントは大きく形を変えていない。

どのモデルも基本は同じなので、反復練習で分解、組立メンテナンスの訓練をしよう。

今後ともメンテナンス情報を書いていく、今回はここまでそれではまた。

まとめ

  • 組立前に部品を洗浄
  • 部品の回転部、摺動部に注油
  • 部品の組立は根気よく実施する
  • ケースを風防の外観を磨きこんで完成
※他機種のメンテナンスのリンクはこちら

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