セイコーの異端児ゴールドフェザーのメンテナンスを行う。
今回は、組み立てフェーズに入っていく。超音波洗浄を終えた部品は高級機の輝きを放っている。
分解工程では、数々の専用設計部品に驚きを隠せなかったが、組み立てはサクサク行っていく。
ただし、技術的には分解よりも組み立てのほうが3倍くらい難しいので、徐々に慣れていこう。コツは繰り返し反復練習あるのみである。
組み立ての際は回転部にオイルを注油していく。
最初に謎部品から設置する。繊細なバネが一体化しているので、慎重に行う。
2番車を設置
アンクルを所定位置に設置。
アンクルプレートを固定。アンクルが首振り動作することを確認した後にねじ止めを行うこと。無理に行うとアンクルの軸が折れたりする。
正しくは固定した後に、裏面の伏石で設置完了かと思うが、今回は伏石は外していない。
機械式時計の特徴であるガンギ車を設置する。当然だが、振動数によって足の数が異なる。
この部品と先ほどのアンクルが衝突する音があのカチカチという美しい音を奏でる。
機械式時計で最も繊細な部品であるテンプを固定する。
このテンプのヒゲゼンマイと天芯と呼ばれる回転軸が機械式時計の肝である。
ここさえ無事であれば、分解、洗浄、オイルアップで復活する可能性が高い。
同時に2番車おさえも固定しておく。
軸がはまっていることを確認しながら1番車と輪列を並べる。
プレートで輪列を固定する。軸がはまっていることを確認したらネジでプレートを固定する。
文字で書くとこの程度だが、最初のうちは、これがまあハマらない。というよりもハマったかどうかがわからない。
これも繰り返すうちに手ごたえで感じることができるようになる。
1番車を固定するプレートをネジで固定する。これは、そう難しくなくハマるはずだ。このあたりで、気づくかと思うが、ネジを留めるのでさえ、最初のうちはままならない。
角穴車を固定する。
文字盤側を組み立てる。
ツツカナを圧入する。
分針を回す歯車を設置する。
以上で、ムーブメントの組み立ては完了だ。
小さな部品一つ欠品しても正常動作は望めないので、部品の紛失には細心の注意を払う。アンティーク品であるため、部品の供給はデッドストックを頼るほかない。
それは、我々素人にはあまりにハードルが高いので、なくす前に壁などで紛失防止を図っておく。
さらに付け加えると、専用設計品の多いゴールドフェザーの部品は他ムーブメントからの流用が難しいものばかりだ。
45ムーブメントと並んで手を出すのをためらうムーブメントといえる。
ムーブメントに文字盤を取り付けし、ムーブメントサイドのネジ2点で固定。
ケースに嵌めたら裏側からムーブメント固定ネジ2つで固定、リューズを差し込み、オシドリを締め付け固定する。
時針、分針、秒針をはめ込む。0:00で固定すると確実である。
いつものことであるが、最初はこれもハマらないので、根気よくチャレンジしよう。反復動作することで作業効率は驚くほど向上する。
ベゼル、風防を取り付ける。特に問題なくパチンと指でハマるはずだ。
裏蓋とベゼルともにわずかに隙間のできる箇所をリューズと反対側、9時の方向に設置する。
今回は、風防の痛みが激しかったので、研磨ではなく、風防交換で対応した。
裏蓋は超音波洗浄と研磨を実施したが、これ以上はキレイにならなかった。メッキ部分だけだはなく下地に、ベースメタルものぞいているようだ。
まあ、これもアンティーク、メンテナンスの魅力の一つである。
そう、完璧にきれいなものや傷のないものが欲しければ、新品を買えばよいのである。使用しているうちに傷はつくし、使用しないのなら動かない時計でいい。
工業製品は使用してこそ、その価値を最大化できる。
まあ、そうはいっても汚い時計ではテンションも上がらない時もある。
そこで、アンティークはきれいにできるものをきれいにすることで、モノへの思い入れを表現し、傷を味にできる。最低限、ベルトはきれいなものを取り付けしてみよう。
ここでは、ベルトと風防、あればリューズを新品にすることでアンティーク感を演出できる。
今回はセイコーのゴールドフェザーをメンテナンスすることで、薄型時計へのこだわりを感じることができた。
「羽のように軽く、薄い時計」をコンセプトに作られたゴールドフェザー。本当に情熱にあふれた時計だと感じる。
そして、先日復刻版が発売されたようだ。
当然のごとくムーブメントはクォーツが使用されたが、そもそもゴールドフェザーのコンセプトを実現するためには、クォーツが必然といえる。
より軽く、薄い時計を作るためには、機械式時計は邪魔なものが多すぎる。
コンセプトを追求するために、歯車を増やし、メインプレートに穴をあけるほどの思いがあったのだ。
ゴールドフェザーは小型軽量なクォーツムーブメントこそ最適解であるといえる。当時クォーツがあったなら、迷うことなくクォーツで本機は製作されたであろう。
見方を変えれば、今後このコンセプトの機械式時計が作られることはなく、類似機種もライナーくらいしか存在しないことから、とても希少なモデルであるといえる。
それではまた。