諏訪精巧舎のクラウン
- ブランド名:セイコー(諏訪精工舎)
- モデル名:クラウン
- ムーブメント型式:cal.560
- 振動数:18000回/h(2.5Hz)
- 使用石数:21石
- 発売年:1959年
- ケース:ステンレスケース
- ラグ幅:18mm
こんにちは、今回はセイコーの標準機であるクラウンについて書いてみる。
1960年台から1970年代のセイコーの機械式時計の標準機はクラウンである。賛否はあるかもしれないが、それは、歴代のムーブメントの構成を見れば明らかである。
そのくらい、セイコーにおいて重要なモデルであるといえる。
歴史的な意味で言えば、日本の時計を世界に知らしめたモデルはマーベルであり、初の国産高級機はロードマーベルである。
しかしながら、クラウンはマーベルを改善し精度、耐久性、コスト、生産性、品質などのバランスにおいて、一つの最適解といえるモデルである。
このモデルをベース、または、ベンチマークとして以降のセイコーのムーブメントが開発されたと推測できる。
クラウンを高級化したものが、クラウンスペシャルやキングセイコー、グランドセイコー。
薄型化したものがライナー。ライナーに自動巻きを付与したものがマチック。
マチックにスポーツ性を付与したものがスポーツマチック、後のセイコー5。
マチックを進化させたものがロードマチック、後の4Sムーブメント。
このモデルなくしてセイコーの偉業は成しえなかったと思えるほどだ。
今回は本機をメンテナンスしていこう。
無理なものは無理
とりかかる前に、動作確認であるが、当然のごとく不動品。
そもそも、リューズ操作不可。引きだしも正転も逆転もできない。完全固着だ。ぬるりとやな予感がするが同時に腕が鳴る。
まあ、開けてみなければわからないのでいつも通り、リューズの反対側からデザインナイフで裏蓋を開ける。
うへあ、、、とんでもない状態だ。
歯車の軸がさびて角穴車が回らないしリューズも回らない。なんじゃこりゃ。錆の粉もムーブメント一面にばらまかれている。何やら不自然なさび方だ。
まあ、とりあえず分解してしまえばよいのである。
オシドリを緩めてリューズを引き出す。
ん?、、、、回らない。ど-やっても回らない。油もだめだ。こーなれば、こちらも最終手段で対応するしかない。
直接、角穴車を外し、プレートを取り外す。リスクはあるが、リューズが動かなければ他に手がない。
プレートを外してみると、これはひどい。リューズ回りが全滅のため、操作系の全交換が必要になる。
というよりもオシドリも破損のため、開放不可能。これはもう、動く状態にしたとしても、メインプレートを含む、多くの部品交換が必要のため、もはや復活とは言えない。
ここで、残念ながら激しいさびのため今回は復活不可能であると判断した。
まあ、無理なものは無理である。
しかし、どのような扱いをしたらここまで破損できるのか、不思議なくらいだ。当時は安いものではないはずだが、何かのトラブルだろうか。
もし、汗や水が入ったのであれば、他も錆ているはずだ。リューズだけにダメージが集中しているのは今回が初めてであった。良い経験をさせてもらえた。
気を取り直して、次回に期待しよう。
それではまた。