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グランドセイコーだけじゃない素敵な国産時計

こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!

今回はアンティーク セイコーについて書いていく。私の独断と偏見で選ぶ、アンティークセイコーの傑作選だ。

そもそも、マニアックな機械式時計の世界。

半世紀やそこいらでアンティークと呼んでいいかどうかは賛否があるが、私は十分アンティークでよいと思う。

今回は日本で手に入れやすく、十分な品質を持つセイコーから、私の思う傑作選を紹介する。

クォーツショック後の世界に生まれた人にとっては、グランドセイコーを除いて、セイコーに高級時計のイメージは持っていないことが多い。

ビジネスモデルが違うために、単純に比較できないが、時計メーカーとしてはロレックスと同等かそれ以上であることに疑う余地はない。

そのくらい、セイコーは世界に誇れるマニファクチュールである。

アンティーク時計おすすめ条件

  • 巻き上げ方式:手巻き
  • 振動数:18000~21600振動/時
  • 機能:3針(デイデイト他の付加機能なし)

まずは、アンティーク時計選ぶ際に気にしたい条件を書いてみた。

いくつも時計を持っているようなコレクターの方は、好みの時計を選んでいただいたほうが良い。

しかし、2~3個持つのであれば、シンプルで故障しないような時計を気にして選んでみよう。

すでに新品が手に入らない上に、設計も古く交換部品もない。

各部品の摩耗度合いだって見当がつかないのだ。故障リスクは減らすに越したことはない。

故障リスクとは部品点数に比例して大きくなる。

10個の部品で動く機械と100個の部品で動く機械で、部品の品質が同じであるならば、後者が先に故障する。

そのため、アンティーク時計のおすすめ条件1は、手巻き式であることだ。

手巻き式は自動巻きのものよりシンプルだ。

これは別段自動巻きでも構わないが、自動巻きは巻き上げ機構部品が増える分だけ故障リスクが増えることになる。

ワインディングマシーンを使われた個体などは、ローター周りはほぼ摩耗しているとみていい。

何より、せっかくの美しいムーブメントの半分を隠しているローターが邪魔である。

そして、手巻きのほうがアンティーク感がある。

おすすめ条件の2つ目は、振動数が低いロービートと呼ばれるものを選ぼう。

5振動とか6振動と呼ばれるものだ。ハイビートと書いていなければ大抵はロービートだ。

過去にパソコン業界では、消費電力と発熱とコストを無視した動作クロック競争が繰り広げられた。

それと同じように機械式時計界でも耐久性とコストをギリギリまで追い詰めた高振動化競争と多石化競争、精度向上競争が行われた。

しかしながら、個人的見解としては振動数は5回/秒、ルビーは17石、精度は±5分/日以下もあれば十分である。

特に振動数は大きくすればするほど設計的な耐久性の余裕がなくなってくる。

日差5分程度なら使用前のゼンマイを巻く時に、時刻合わせすればそれで済むし、時計を付けてる時間など、せいぜい1日で12時間以下である。

特にこだわりがなければ、5振動か6振動のものを選ぼう。

最後のおすすめ条件は、3針のみで他の付加機能を持たないことだ。なぜなら大抵は、付加機能から故障するからだ。

具体的には、カレンダー機能やら、ストップウォッチ機能だ。

いつ故障するかわからない機械式のアンティーク時計を毎日使うということは、あまり考えにくい。

2~3個以上をローテーションして使うことをお勧めする。

その中で使うときに時刻を合わせ、ネジを巻くのはそれほど苦にならないが、31日あるカレンダーや曜日を合わせるのは少々面倒である。

また、ストップウォッチ機能のついたクロノグラフは、見た目がスポーティーで人気があるが、実用性は皆無である。

大抵はクロノグラフの針がずれて気になってしょうがなくなる。クロノグラフはおとなしくクォーツ時計かスマホを使おう。

以上の条件を確認したうえで、おすすめモデルを紹介していく。

ロードマーベル(前期型)

  • 高級感    :★★★★
  • 実用性    :★★★
  • メンテナンス性:★★★★
  • 長所     :国産初の高級機
  • 短所     :比較的年式が古い(1958年)

1つ目は、国産初の高級機であり、当時のセイコーのフラッグシップである前期型ロードマーベルである

この時計の一番の魅力は、ムーブメントの高級感とレトロ感である。かつ最低限の実用性もかな備えている。そんなバランスの時計だ。

大きく磨きこまれた角穴車とねじ留めの伏石と見どころが多くある。

また、SEIKOが高級機としてのありかたを探っていたモデルでもある。

フラッグシップ機ながら、後継のGSやKSと比較するとネームバリューがないせいか、比較的手に入れやすい銘品である。

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ファーストグランドセイコー/キングセイコー

  • 高級感    :★★★★★
  • 実用性    :★★★
  • メンテナンス性:★★★★★
  • 長所     :抜群の高級感
  • 短所     :比較的年式が古い(1961年)

2つ目は、ロードマーベルに代わる当時の新たなフラッグシップ、グランドセイコーとキングセイコー、そのファーストモデルだ。

諏訪精工舎のグランドセイコー、亀戸精工舎のキングセイコーと2大フラッグシップとして誕生した。

2大とはいったもののその価格は倍近く離れていたようなので、並列に扱ってよいか悩むところだ。

しかし、その価格差の内容は主に調整工程であるので、通常のオーバーホールを行った時点でほぼその差分はない。

価格の差分からすると部品の選別も行っていないとおかしい気はしている。

つまり、同設計のムーブメントであるが、GSのほうがKSよりも部品公差基準が厳しかったと推測できる。

本機の魅力は、なんといってもその高級感。そういった面では本機に勝るものは、現代においても多くはない。

その片鱗は、金貼りケースにすら確認できる。金貼りケースの裏蓋には100μmとの記載がある。

つまり、0.1mmの14金の板が貼り付けられているのだ。

1μmもあれば、分厚い金メッキといったところだが、100μmもあれば、文字通り板である。

さらに、信頼性も十分実用に足るものである点も見逃せない。

マーベルからクラウンとクロノスにブラッシュアップし、ムーブメントの大型化をした際に、その信頼性は大幅に向上した。

そのクロノスをベースに作り上げられた本機のバランスは素晴らしいものである。

本機もGSのネームバリューが大きすぎるため、KSはかなりリーズナブルに出回っているように感じる。

しかしながら、年式の古さによる摩耗や、製造技術に差によって、現行品と比較するとその信頼性は比較にならないので、信頼性の高いものが欲しい場合は、迷わず現行品を手に入れよう。

クラウンスペシャル/ロードマーベル(後期型)

  • 高級感    :★★★★
  • 実用性    :★★★★
  • メンテナンス性:★★★★★
  • 長所     :機械式時計の一つの完成形
  • 短所     :比較的年式が古い(1961年)

3つめは、準高級機であるクラウンスペシャルだ。準高級機とは言えその内容は、とても豪華な仕様である。

ファーストGS/KSがクロノスベースなら、本機は、標準機であるクラウンをベースにブラッシュアップされている。

外観はファーストGS/KSと比較しても遜色はない。

金貼りケースも80μmとセカンドGS/KSと同程度ではないかと推察する。

これまたネームバリューの問題でコスパは抜群だ。

クラウンとほぼ同等とみる人も多く、とてもリーズナブルに手に入れることのできる名機である。

セカンドグランドセイコー/キングセイコー

  • 高級感    :★★★★
  • 実用性    :★★★★★
  • メンテナンス性:★★★★★
  • 長所     :機械式時計の一つの完成形(1964年)
  • 短所     :初期型の秒針規制機構は故障が多い

4つ目は44系ムーブメントを搭載するセカンドグランドセイコーとキングセイコーだ。

本機の特徴はファーストGS/KSからそのコンセプトを引き継いだ後継機である。

デザインはブラッシュアップされ、よりモダンな雰囲気になっている。

このようなバランスのものは現代には少なく、手巻き時計の一つの完成形といえる。

同時に時計としてある程度の完成が見えた状態から、徐々に合理化の波にのまれていく様子が確認できる。

金貼りケースの厚みは80μm、文字盤はAD仕様と気づかない程度にファーストモデルからコストダウンされている。

手巻き機械式時計としてのピークとも思える本機であるが、高級機という面ではピークを過ぎたといえる。

蛇足であるが、初期型には鎌型の秒針規制機構が採用されている。

希少であるためマニアには受けるが、設計としては大きな故障要因であるため、可能であれば、鎌なしで検討しよう。

後期型はスクリューバック式を採用していて、気のせい程度、近代化している。

このモデルあたりから、防水機能やカレンダー機能が実装されたものも現れ始める。

ライナー

  • 高級感    :★★★
  • 実用性    :★★★★★
  • メンテナンス性:★★★
  • 長所     :バランスの取れた薄型機械式時計
  • 短所     :薄型のためマージンを削り込んでいる(1960年)

5つ目は薄型高級機のライナーだ。

本機の特徴はその薄さである。標準機であるクラウンの信頼性をベースに多石化、薄型化した高級機である。

薄型機械式時計はクォーツショック後に量産されることは考えにくいので、アンティークらしい時計として、検討すべきモデルであるといえる。

さらに薄型かつ多石のものでゴールドフェザーがあるが、あれは、特別設計で異常なまでに削り込まれている。

そのこだわりは、信頼性に影響しそうな雰囲気を感じるため、ベーシックな設計のライナーをお勧めする。

その後の自動巻きムーブメントの設計に流用されたことから、信頼性とコストの面からバランスが取れた設計であったと推測できる。

また、マチックの部品も流用できることからタマ数が確保されている。

もう少し信頼性が欲しい場合は、SEIKO最後の手巻きモデル、61系スカイライナー(1968年)を検討しよう。

番外編 自動巻き編

上記までのように、アンティーク時計の圧倒的なおすすめは手巻き時計であるが、ゼンマイを巻くことが面倒であるのとゼンマイ切れが発生しやすいのも事実である。

そこで、自動巻きという選択肢もあるにはあるので、以下に紹介していく。

マチック

  • 高級感    :★★★
  • 実用性    :★★★★
  • メンテナンス性:★★★
  • 長所     :基本構造はライナーと同一(1960年)
  • 短所     :ローターの巻き上げ感がいまいち

本機の魅力は、上記で紹介した高級機ライナーがベースである点と30石以上という高級、多石機がラインナップされていることだ。

また、スポーツマチック からのセイコー5のようなイメージがあるせいか、廉価品と勘違いされている節がある。

数少ない金メッキムーブメントのラインナップもあることから、本機が高級ラインであることは疑う余地はない。

植字インデックスのSD文字盤のものも多くあるためお買い得モデルといえる。

ロードマチックスペシャル(52系)

  • 高級感    :★★
  • 実用性    :★★★★★
  • メンテナンス性:★
  • 長所     :4Sと同様機械、パーツに困らない
  • 短所     :構造がとても複雑

本機は亀戸精工舎の52系ロードマチックだ。

現行の4Sムーブメントと同設計であるため、部品に困ることがなく、その耐久性と信頼性は現代機とそん色がない。

その性能とサイズから、まさに亀戸精工舎の最高傑作ムーブメントと思っている。

諏訪精工舎の56系ロードマチックと比較すると、同じ機種名が与えられたことが不思議なくらい別物である。

しかし、「52系は4Sムーブメントと同等」ということが有名らしく、52系と56系を同一視している人は少ないようである。

このあたりになってくると、大量生産とコストダウンもかなり厳しくなってきた跡が見て取れる。

しかしながら、52系、4S系の時計は、新品価格で初任給の半分程度と高級品であることに変わりはない。

セイコー5(7S系、4R系)

  • 高級感    :★
  • 実用性    :★★★★★
  • メンテナンス性:★
  • 長所     :現行機械、パーツに困らない。究極の実用性
  • 短所     :構造がとても複雑、基本使い捨て

ここまでくると、アンティークどころか、現行機ではないかという気がしてくるが、セイコーの最も素晴らしいムーブメントの一つであるので、紹介させていただく。

その徹底したコスト削減と生産技術による大量生産で、確かに高級感はなく、そのムーブメントは鑑賞に適してはいない。

しかし、このムーブメントの最も素晴らしい魅力は、オーバーホールを前提としていないということだ。

分解清掃などと面倒くさいことをせずに、故障したら、オーバーホールよりも安い価格で、新品ムーブメントに交換してくれるはずだ。

場合によっては、もう一台新品が買えてしまうという素敵さである。まさに機械式時計の概念を覆すモデルである。

まとめ

いかがであっただろうか。私の独断と偏見でピックアップを記載した。賛否あるかもしれないが、モノづくり的な観点で見た結果である。

アンティーク時計選定の参考になれば幸いである。

それではまた。


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