
「図面は問題ないのに、なぜか現場でうまくいかない」
このような経験はないだろうか。
CAD上では干渉もなく、CAEでも問題は見当たらない。
しかし、実際に試作や量産へ進むと、
- 組み立てができない
- 想定外の変形が発生する
- 作業性が悪く現場から指摘される
といった問題が発生する。
これは新人設計者に限らず、多くの設計者が経験する典型的な失敗である。
結論から言えば、その原因は単純である。
実際の現場を考慮できていない
設計とは、CAD上で成立させる作業ではない。
現場で再現可能な状態に落とし込んで初めて成立するものである。
極端な言い方をすれば、CADや図面を書くこと自体は「設計」ではなく、「設計の意図を伝えるための手段」に過ぎない。
つまりは図面やCADができていても、設計ができていなければ、後工程で問題が出ることになるだろう。
本記事では、量産で詰まりやすい設計ミスを7つ取り上げ、失敗しないための考え方を解説する。
新人設計者がやりがちなミス7選
① 公差設計がされていない
CAD上では成立していても、実際には組み立てできないケースである。
原因の一つとして考えられるのは、バラつきを考慮していないことである。
設計段階では「基準寸法」を前提に考えてしまいがちであるが、現実のものと基準寸法とでは必ず差異が発生する。例えば、以下のようなものである。
- 加工精度のばらつき
- 熱変形
- 組立時のズレ
これらを考慮しない設計は、机上では成立していても現場では成立しない。
そのため、各部品や組み立てのばらつきを考慮した公差設計を行い、どこまでを許容するのか、それは現実的なのかを検討する。
設計とは「理想的な条件」で考えることではなく、「現実的な条件でも成立する状態」を作ることである。
そして、この現実的な条件がとても難しいのである。
② 加工できない形状になっている
CADでは容易に作成できても、実際の加工では成立しない形状が存在する。
例えば、以下のようなものである。
- 工具が入らない
- 抜き勾配が不足している
- 曲げ加工を考慮していない板金形状
設計者が加工工程を理解していない場合、この問題は頻発する。
良くも悪くもCADはとても自由度が高い、特に3D-CADなんかを使用していると、どんな形も描けるし、画面上でぐるぐる回していると、もうすでにそこにあるような、できてしまったような錯覚を覚える。
そして、最初につまづきやすいのは、やはり板金だろう。
常に折り曲げ加工前の展開図状態を考慮して、描いていく必要がある。
直方体の展開図くらいは簡単だが、それ以上になると途端にわからなくなる。3D-CADであれば展開図をチェックする機能もあるだろうが、それでも難しい。
「図面やCADで描ける」と「実際に作れる」は別物である
という認識が重要である。
③ 組立性を無視している
図面上では成立していても、現場で組み立てができない設計である。
例えば、以下のようなものである。
- ドライバーが入らない位置のネジ
- 組立順序を考慮していない構造
- 作業姿勢が極端に悪い配置
これは、
作業者視点が抜けている
ことが原因である。
設計者はどうしても図面中心で考えがちであるが、製品を実際に組み立てるのは現場である。
昨今の3D-CADの普及や効率化の中で、現場を知らない設計者が増えている可能性がある。
図面では感じられない、熱量、重さ、音、臭い、大きさなど実際の5感と設計時のイメージのすり合わせがますます大切になってくる。
当然、現場AでOKでも現場BでNGなんてこともザラである。
そして、現場で成立しない設計は、どれだけ理論的に正しくてもNGである。
④ 材料・工法の理解が不足している
材料特性や製造工法を理解せずに設計すると、不具合の原因となる。
例えば、以下のようなものである。
- 樹脂の収縮
- 板金のスプリングバック
- 熱による変形
材料は理想通りには動かない。
しかし新人設計者ほど、
CAD上の形状だけを見てしまう
傾向が強い。
スプリングバック程度は理解が簡単かもしれないが、樹脂などは金型毎に様子が異なるので、都度詳細に見ていく必要がある。
CADやCAEでは表現されない要素も多くある
設計では、材料が現実にどう振る舞うかまで考慮する必要がある。
⑤ CAEを過信している
CAEは非常に有効なツールであるが、都合のいい計算機ではない。
よくある失敗は、
「CAEでOKだから問題ない」と判断してしまうこと
である。
CAE結果は、
- 境界条件
- モデル化
- 材料設定
によって大きく変化する。
つまり、前提条件がズレれば結果もズレる。
設計者を含め、CAEを理解していないと、どうしても、「CAE=計算機=電卓」と勘違いしてしまう。
「CAE=計算機」は正しい認識であるが
「CAE=都合のいい電卓」ではない。
電卓では、「5+3」を入力すれば「8」が出力されるし、それを議論する人はいないだろう。
CAEでも同様な条件で、計算開始すれば、同様な結果が得られる。
やっぱり同じじゃないかと思うかもしれないが、入力条件の組み合わせが比較にならないくらい多い。
それはもはや、2人が同じ認識を持って会話することが難しいレベルである。
究極的にはやった人しかわからないし、計算する人によって結果が変わるものである。
よってCAEは「答え」ではなく、
設計判断を補助するための材料
として使うべきである。
⑥ 試作問題なし=量産問題なしと思っている
試作段階で問題が出なかったからといって、量産でも成立するとは限らない。
実際には、
試作OK → 量産NG
というケースは非常に多い。
理由は、
- 生産条件が異なる
- 作業者が変わる
- コスト制約が入る
ためである。
さらに言うなら、量産1回目OK、量産2回目NGや10回目だけNGだってあり得る。
試作はあくまで確認工程であり、量産を保証するものではない。
⑦ 設計レビューを軽視している
設計レビューを単なる形式的イベントと考える人は多い。
しかし実際には、
設計レビューは最後の防衛ライン
である。
レビューを軽視すると、
- 思い込み
- 見落とし
- 条件漏れ
がそのまま後工程へ流れてしまう。
できる設計者ほど、レビュー前の自己確認を徹底している。
なぜこれらのミスが起きるのか
ここまで挙げたミスには共通点がある。
それは、
理想条件で設計している
ことである。
設計者は無意識のうちに、
- 加工ミスなし
- 組立ミスなし
- 想定外なし
という世界で考えてしまう。
しかし現実には、
- 必ずズレる
- 必ずミスが起きる
- 必ず想定外が発生する
これが製造現場である。
したがって重要なのは、
失敗前提で設計すること
である。
解決策:失敗前提で設計する
では、どうすれば良いのか。
答えは単純である。
最悪ケースを想定すること
である。
具体的には、
- バラつきを許容する
- 組立ミスを防ぐ
- 想定外でも成立する余裕を持たせる
こうした考え方が必要になる。
優秀な設計者ほど、
「問題は必ず起きる」
という前提で設計している。
まとめ
設計で本当に重要なのは、
CADや図面が正しいかではなく、現場での再現性を確保できるCADや図面か
である。
この視点を持つだけで、
- 設計ミスは減り
- レビュー評価は上がり
- 成長速度は大きく変わる
はずである。