あれあれ、なんで組めないの?公差とは何か

公差は理想のと現実のズレ

新人設計者が最初に驚くこと。

それが、

「図面通りなのに組めない」

という現実である。

CAD上では完璧だった。

寸法も合っている。

しかし実際に作ると、

  • 入らない
  • ガタつく
  • 傾く
  • 動かない

などの問題が起きる。

ここで初めて、

“公差”

という存在の重さを知る。

本記事では、

新人設計者が最初につまずきやすい

「公差」

について、

機械設計の視点から解説する。

当然、私もばっちり公差設計でミスった経験があるので、安心してほしい。

それ以来、公差設計は特にきっちりこなしているほうだと思う。

そもそも公差とは何か

まず結論。

公差とは、

「寸法に許される誤差範囲」

である。

例えば、

φ20 ±0.1

なら、

  • 19.9mm
  • 20.0mm
  • 20.1mm

はOK。

つまり、

完全に20.000mmで作る必要はない。

というよりも「作れない」が正しい。

なぜ誤差が必要なのか

ここが重要。

現実には、

完全な寸法で加工することは不可能だから。

加工には必ずばらつきが出る

例えば、

  • 切削
  • 研削
  • プレス
  • 射出成形

どんな加工でも、

微小な誤差が出る。

つまり、

現実世界は理想通りではない。

言えるのはどのくらい理想に近いものが作れるかくらいである。

この世には、理想的なものを作る職人というのが存在する。

聞いたことがあるのは、限りなく理想的な平面を作る職人。

具体的に何をしているかというと、

毎日、基準となる平面の板を磨き続けている。

それこそが、究極の平面とされているとのことだ。

本記事は計測の記事ではないのでこの程度とするが、

公差設計がなぜ必要かは、理想的な状態は存在しないからと考えておこう。

CADは“理想世界”

新人ほど勘違いしやすい。

CAD上では、

全てが完璧。

  • 真円
  • 真直
  • 完全平行

で存在する。

しかし現実では、

そんなことはほぼない。

だから公差が必要

つまり公差とは、

“現実を成立させるためのルール”

なのである。

新人設計者が最初にやりがちな失敗

1. 公差を入れない

非常に多い。

とりあえず形状だけ描く。

しかし、

公差がなければ、

現場は困る。

なぜか

どこまで作れば良いか分からないから。

つまり、

品質基準が存在しない。

公差を指示しない寸法は図面に書いてはいけない。

大抵は一般公差で指示しておくだろう。

JIS B0405あたりを参照すると出てくるかともう。

2. 全部厳しくする

これも危険。

はっきりって、厳しすぎる公差は設計の怠慢であるとすらいえる。

新人ほど、

「精度が高いほど良い」

と思いやすい。

しかし現実は逆。

公差を厳しくすると

  • 加工費UP
  • 不良率UP
  • 加工時間UP
  • 測定難易度UP

など、

一気にコストが上がる。

「高精度=正義」ではない

重要なのは、

必要十分な精度。

過剰品質は危険。

緩い公差でも成り立つ設計がいい設計といえるだろう。

ただ、感違いしてほしくないのは、時に厳しい公差も必要な時はある。

その部分については、明確に説明できるようにしておこう。

3. 公差積み上げを考えない

これが最も怖い。

私もこれをやってしまったことがある。

例えば、

部品A
部品B
部品C

それぞれに誤差がある。

すると、

最終的には大きなズレになる。

各部品の公差が±1mmだとして、

最悪方向にすべての部品が1mmズレると全体では3mmズレることになる。

100mm程度の部品であれば、3%近いズレになるのだから、大抵のものは組めないだろう。

なぜ組めないのか

単品では問題ない。

しかし、

誤差が同じ方向に重なると、

成立しなくなる。

これが、

公差積み上げ。

「図面通りなのに入らない」の正体である

実際の量産現場では非常に多い。

原因の多くは、

公差設計不足。

改めて公差設計を見直そう

設計者は“ばらつき”を考える仕事

ここが本質。

設計とは、

理想寸法を描く仕事ではない。

現実の誤差込みで、

成立させる仕事。

どこにどの程度の公差をもたせるのか、どの部品の公差を緩く、きつくするのかを配分する。

例えば、金属加工製品であれば厳しい公差を実現できるだろう。

ゴムスポンジ製品であれば公差は緩くせざるを得ないだろう。

それでも全体で成立する公差内に納めなくてはならない。

なぜベテラン設計者は公差を怖がるのか

新人ほど、

形状ばかり見ている。

しかしベテランほど、

公差を重視する。

なぜかというと

機械は、

誤差込みで動くから。

例えば

  • 軸が入るか
  • ベアリングが回るか
  • ガタが出ないか
  • 摺動するか

全て公差が関係する。

これにその他の要因、変形や経年劣化なども絡んでくると

さらに話は深くなっていく。

本当にそれらを考慮した、織り込んだ公差なのかと自問するのだ。

嵌め合いも公差の世界

嵌めあいの代表例としては軸と穴が挙げられるだろう。

緩すぎると

  • ガタ
  • 振動
  • 異音

が出る。

キツすぎると

  • 入らない
  • 焼き付き
  • 変形

が起きる。

つまり、

わずかな差が重要。

「このくらいでいい」が危険

公差は感覚で決めてはいけない。

なぜなら、

量産では問題が拡大するから。

公差設計はこれくらいでいいといえるほど自由度がない。

むしろ、何も考えずにやるとほとんどの場合成り立たない。

何%のNGを許容するかを織り込む必要がある。

例えば「1000個作ったら3個は組めない設計」

そして「それに対しどう対応するか」を決めるのも含めて公差設計である。

試作で大丈夫だっかからOKは量産では大抵NGとなる

量産では、

個体差が増える。

すると、

突然組めなくなるものが出てくるのはむしろ当然の結果といえる。

想定しているよりも多いか少ないかくらいである。

公差とコストは直結する

ここも重要。

精度を厳しくするほど、

加工は難しくなる。

例えば

  • 高精度機械
  • 追加工程
  • 高級測定器

などが必要になる。

つまり、

コストが上がる。

この辺は、理解する分には特に難しいことはないだろう。

だが、現実的にはトレードオフなので、設計は最適な公差とコストを決めるのだ。

良い設計者ほど“必要精度”を理解している

全て高精度ではない。

本当に重要な場所だけ、

厳しくする。

これが重要。

なぜそこに高精度が必要なのかを説明できるようにするために公差設計が必要なのである。

現場では何が起きているのか

現実の製造現場では、

  • 温度変化
  • 工具摩耗
  • 機械差
  • 作業差

などがある。

つまり、

誤差ゼロは存在しない。

だから重要なのは

“多少ズレても成立する設計”

なのである。

同時にどのようにばらついているか、分布が重要な項目である。

やたらと公差ギリギリのものばかりできているようでは

何か対応が必要な可能性を考慮しよう。

大抵のものは公差ギリギリで作られてくる。

何なら「公差を超えてしまったのだが、問題ないか」なんて交渉をされることすらある。

一般公差ならまだしも、指定公差でに対し、これを聞くのはどうかと思うが、

現場との対話はとても重要なので、もしも機会があったなら詳細を聞いてみよう。

幾何公差を理解すると世界が変わる

新人は寸法公差だけ見やすい。

しかし実際には、

  • 平面度
  • 真円度
  • 同軸度
  • 直角度

なども重要。

なぜか

形だけ合っても、

姿勢がズレると成立しないから。

意外と指定し忘れるのが幾何公差であるといえる。

寸法公差の指定は確かに重要である。

指示された寸法に入っているかを測定するだろう。

しかし、たまたま測定箇所が指示寸法に入っているだけかもしれない。

極端に言うと面が波打っている可能性も考慮できるのである。

「加工できる」と「成立する」は違う

ここも重要。

加工自体は可能。

しかし、

組立や性能で問題が出る。

これが設計の難しさ。

加工できるけど設計として成立しないのはNGだし。

設計として成立するけど加工できないもNGである。

加工できて設計として成立させなければならない。

本記事のテーマではないが、他にも関連する現場とのバランスが必要になってくる。

設計と加工のほかにも検査、組立、管理、コストなど多くの側面から見てバランスさせるのが設計の役割である。

AI時代でも公差理解は重要

AIが図面を描く時代は来る。

しかし、

  • 加工ばらつき
  • 組立誤差
  • 現場のクセ

まで完全理解するのは難しい。

だからこそ、

公差理解が設計力になる。

むしろ、公差設計こそが機械設計の大きなアドバンテージの一つといえるのではないだろうか。

何年も機械設計に携わってきて、公差設計まで詳細に議論できる人はほぼいない。

膨大な公差設計項目をすべて見るのは難しいからなのだが、

量産やエンドユーザーでNGが出る原因の一つが公差設計なのだ。

並んで熱設計とCAEについても詳細に議論できる人はわずかな印象だ。

これについては別記事で書いていこうと思う。

まとめ

公差とは、

単なる数字ではない。

“現実世界を成立させるためのルール”

である。

機械は、

理想寸法では動かない。

  • 加工誤差
  • 組立誤差
  • 個体差

を含めて成立する。

つまり設計者とは、

“ばらつき込みで成立させる人”

なのである。

新人設計者ほど、

形状に目が行きやすい。

しかし本当に重要なのは、

誤差があっても成立する設計。

そこに、

機械設計の本質がある。