やっぱり、いつでも実機評価が最重要

CAE解析ってすごいよね

近年、コンピューターの性能向上と併せて

CAE解析やシミュレーション技術は急速に進化している。

  • 強度解析
  • 熱解析
  • 流体解析
  • 振動解析

など、

試作前の設計段階で多くのことが確認できるようになった。

そのため新人設計者ほど、

「解析結果がOKだから安心」

と思いやすい。

しかし、実際の設計現場では、

解析では問題なかったのに、実機で壊れる

ことがある。

しかも、

その原因が簡単には分からないことも多い。

本記事では、

なぜ“実機評価”が重要なのか、

そして解析だけでは見抜けない現実について解説する。

CAE解析は非常に便利である

まず重要なこと。

解析自体は悪ではない。

むしろ現代設計において必須。どんどん使っていくべきである。

例えば、

試作前の段階で、

  • 応力集中
  • 温度分布
  • 流速
  • 変形量

などを予測できる。

昔なら試作品を作らなければ分からなかったことが、

試作前の段階で見えるようになった。

これは非常に大きい。

その結果、

  • 試作回数削減
  • 開発期間短縮
  • コスト低減

など、

開発効率は大きく向上したといえる。

CAE解析がなかった時代には戻れないくらいである。

でも解析は“現実そのもの”ではない

ここが本質。

解析とは、

現実をモデル化したもの。

つまり、

“仮定”

の上で成立している。

新人設計者やCAEを理解できていない人ほど、

カラフルな応力分布図を見ると、

「これが正しい答え」

と思いやすい。

しかし実際には、

入力条件が違えば、

結果も変わる。

つまり、

解析結果は、

入力した条件に強く依存する。

言い方を変えればいかようにも調整可能である。

もっと言うと、現実に合わせて入力条件の調整を繰り返すのが解析である。

境界条件を軽視すると危険

解析で特に重要なのが、

境界条件。

例えば、

  • どこを固定するか
  • どこへ荷重を入れるか
  • 接触をどう定義するか

など。

ここがズレるだけで、

解析結果は大きく変わる。

現実では完全固定されていないのに、

解析では完全固定。

これだけでも、

実機との差が生まれる。

最もノウハウが詰まっているのは、接触部分や変化の大きい部分である。

実機には“現実のノイズ”がある

実際の機械は、

理想状態では動かない。

例えば、

  • 組立誤差
  • 加工ばらつき
  • 温度変化
  • 摩耗
  • 締付ばらつき

など。

多くの要素が同時に存在する。

しかし解析では、

計算負荷やモデル簡略化のため、

こうした要素を省略することがある。

つまり、

解析は“整理された世界”。

一方、

現実は“乱れた世界”。

ここが大きく違う。

どこまで現実を解析に織り込むか、織り込めるかが解析結果の正確さに影響する。

矛盾するかもしれないが、

わかっているから解析できる。

しかし、わかっていることを知る必要はないと思うだろう。

このような一見矛盾したツールをどのように使用していくかが肝である。

「解析では問題なし」が危険な理由

実際の設計現場では、

解析でOKだったにもかかわらず、

実機で問題が出ることがある。

例えば、

軽量化設計。

解析上では強度問題なし。

しかし実機では、

振動が増え、

ボルト緩みや疲労破壊が起きる。

つまり、

単一の解析だけでは、

現実全体を再現できない。

このような経年変化を解析に織り込むのはかなり難しいといえるだろう

解析では何が見えて、何が見えないのか、それはなぜかをよく理解する必要がある。

なぜベテラン設計者は実機を重視するのか

経験者ほど知っている。

本当に怖い問題は、

実機でしか見えないことを。

例えば、

  • 微妙な異音
  • ビビリ振動
  • ガタ感
  • 使用感
  • 熱の伝わり方

など。

これらは、

数値だけでは分かりにくい。

実際に触って初めて分かる。

もっと言えば解析できない項目が実機に影響することを理解しているからだ。

いかに解析を極めても実機評価がなくなることは当分の間ないだろう。

「なんか嫌な感じ」は重要

ベテラン設計者は、

実機を見ると違和感を感じる。

  • この音は危ない
  • この揺れ方はおかしい
  • この変形は不自然

など。

これは、

実機を見続けた経験。

つまり、

現場感覚。

こればっかりは経験を積まないとわからないが、

だからこそ、貴重な感覚であるといえる。

CAEが苦手なもの

特に難しいのが、

接触問題などだろう。

例えば、

  • 摩擦
  • ガタ
  • 面粗さ

など。

これらは実際には複雑に変化する。

しかし解析では、

単純化せざるを得ない。

そのため、

現実との差が出やすい。

さらに厄介なのが、

振動。

振動は、

  • 固定条件
  • 剛性差
  • 部品ばらつき

などで大きく変化する。

つまり、

非常に現実依存。

解析はできなくはないが、コストと比較して得られるメリットは小さくなるだろう。

人間の使い方も解析しきれない

これも重要。

ユーザーは、

設計者の想定通りには使わない。

例えば、

  • 想定外の荷重
  • 無理な使い方
  • 衝撃
  • 偏った操作

など。

こうした現実は、

解析だけでは見抜きにくい。

現場ではどうしているのか

実際の開発現場では、

解析と実機を両方使う。

まず解析で、

危険箇所や方向性を確認する。

その後、

実機で本当に成立するかを見る。

つまり重要なのは、

“解析と現実を繋ぐこと”

なのである。

先ほども述べたが、究極的には矛盾しているのだ。

通常の電卓でも同じであるが、1+1=2であることがわかっている人にしか使えない。

最悪、電卓がなくても計算できるか、電卓の中の計算を理解している人が電卓を使えるのだ。

CAEも同じであるのだが、電卓よりは少し複雑なため使える人を選ぶだろう。

強度解析を例にとると、

この材料でこの形状ならここら辺に500MPaくらい発生して破損するな

とわかっている人が使って初めて意味を成すのである。

結果、思ったのと違うところに1000MPa発生したら、

何か入力条件が間違っているか、

自分の理解が間違っているかを検証できる。

知らない人が見れば、1000MPa発生するからNGと判断するだろう。

知っていることと、見ようと思っているものしか正確に見えないのが解析である。

解析はいつどのように使う?

具体的には試作回数を減らすためや、不具合の解析に使うことになるだろう。

もし解析がなければ、以下の手順となるだろう

  • 1回目の試作
  • うまくいかなかったところを改善
  • 2回目の試作
  • うまくいかなかったところを改善
  • 3回目の試作
  • 以降繰り返し

解析があっても基本的には同じだ。

  • 1回目の解析
  • 1回目の試作
  • 試作結果を解析にフィードバック
  • 2回目の解析
  • うまくいかなかったところを改善
  • 2回目の試作
  • 試作結果を解析にフィードバック
  • 3回目の解析
  • うまくいかなかったところを改善
  • 3回目の試作
  • 以降繰り返し

試作の前に解析を行い、試作の結果を解析にフィードバックする。

これを繰り返す。

さあ、ますます意味が分からなくなってきたかもしれないが、

応力分布や応力集中箇所など試作評価では見えなかったことが、見える違いがある。

結果として、試作回数を減らすことができるのだ。

手順は増えているが、試作作成と解析のスピードのトレードオフといえる。

解析している間に10倍のスピードで試作できるなら、それも一つだろう

だが、通常試作の製作には数日かかるので、大抵は解析したほうが良い結果となるだろう。

「解析できる人」と「設計できる人」は違う

ここも重要。

解析ソフト操作が上手くても、

実機理解が浅い場合がある。

一方、

強い設計者ほど、

  • 実機を触る
  • 壊れ方を見る
  • 現場へ行く

ことを重視する。

なぜなら、

機械は現実世界で動くから。

機械設計者であるなら、本業は設計できる人であって、

ツールとして解析を使用できる人になろう

究極的に複雑な解析は専門の人に任せてもいい。

「試験で壊れて良かった」という考え方

新人は、

試験失敗を嫌がる。

しかし本当は逆。

市場で壊れる方が危険。

つまり、

開発中に壊すことは重要。

壊れることで、

  • 弱点
  • 限界
  • 想定不足

が見える。

これは非常に価値がある。

市場で壊れることほど恐ろしいことはない。

もし、市場で壊れたなら、人に危害を与える可能性があるのだ。

人のために作ったものが、人に危害を加えるようなことはあってはならない。

開発中に徹底的に弱点をあぶりだそう。

開発中に壊れることほどラッキーなことはない

AI時代でも実機理解は消えない

今後、

AI解析はさらに進化する。

しかし、

現実世界には、

予測しきれない要素が残る。

  • 摩耗
  • 個体差
  • 使用環境
  • 人のクセ

など。

だからこそ、

実機感覚を持つ設計者は強い。

まとめ

CAE解析は非常に強力。

しかし、

それは“現実を近似したモデル”

である。

実際の機械には、

  • 振動
  • 摩擦
  • 個体差
  • 使用環境

など、

多くの現実要素が存在する。

つまり設計とは、

解析結果を作る仕事ではない。

“現実で成立する機械”

を作る仕事なのである。

本当に強い設計者ほど、

解析画面だけで満足しない。

必ず実機を見て、

触って、

壊して、

現実を確認している。

そこに、

機械設計の本質がある。