
「レビューで毎回同じことを指摘される」
新人設計者の多くが一度は経験する悩みである。
自分では考えたつもりでも、
- 「組立考えた?」
- 「公差これで大丈夫?」
- 「量産できる?」
と次々に指摘される。
その結果、
「自分は設計に向いていないのではないか」
と感じてしまう人も少なくない。
しかし実際には、多くの場合、
“見るべきポイントを知らないだけ”
である。
設計レビューはセンスではない。
確認するべき視点を理解しているかどうかで決まる。
実際に指摘する側も、過去の経験や過去資料などに基づいて、指摘しなければならないポイントについて指摘している人が大半だろう。
そのため、指摘をもらったらチャンスであることのほうが圧倒的に多い。
本記事では、設計レビューで頻繁に指摘されるポイントを10個解説する。
なぜ設計レビューが止まるのか
結論から言えば、
設計者視点だけで考えている
からである。
設計者はどうしても、
- 形状
- 強度
- 寸法
に意識が向きやすい。
しかし実際の製品は、
- 加工
- 組立
- 輸送
- 使用環境
- メンテナンス
まで含めてトータルで成立しなければならない。
各担当が集まる設計レビューでは、その“抜け”を確認されているのである。
設計レビューで指摘されるポイント10選
① 公差設定が厳しすぎる
新人設計者に非常に多いミスである。
「精度を出したい」または「高精度でなければ成立しない」などの理由で、
非現実的な厳しい公差を入れてしまう。
しかし公差を厳しくすると、以下の要因につながる
- 加工コスト上昇
- 歩留まり悪化
- 調整工数増加
重要なのは、
“必要十分かつ実現が可能な精度”
である。
② 組立順序を考えていない
図面上では成立していても、
実際には組めない
というケースである。
例えば、以下などである。
- 後から工具が入らない
- 部品同士が干渉する
- 組立順が成立しない
設計時には、
「現場でどう組むか」
まで想像して設計する必要がある。
③ 工具スペース不足
組立順序に少しかかわるが、これも非常に多い。
ネジやボルト配置だけを見て設計すると、以下のような問題が起きる。
- ドライバーやレンチが回らない
- ドライバーやソケットが入らない
- そもそも手が入らない
特に小型の筐体や高密度な筐体設計では頻発する。
現場でどのような工具を使用しているか、または使用してもらうかを考慮してい設計する必要がある。
④ 加工方法を理解していない
設計レビューでは、
「これ、どうやって作るの?」「作れないよ?」
という指摘がよく入る。
CADでは自由に形状を作れるが、
現実の加工には多くの制約がある。
- 板金の曲げ制約
- 樹脂の抜き勾配
- 加工工具の逃げ
これらを無視した設計は成立しない。
加工方法を理解することも設計力を上げる方法のひとつである。
不安になったら、加工可能か担当者に事前確認してみるといいだろう
持っている加工工具や加工機械、加工技術の制約である場合もある。
⑤ 材料特性を考慮していない
各材料には多くの特性があるので、それらを考慮して設計する必要がある。
例えば樹脂設計では、
- 収縮
- 湯流れ
- 温度変化
などを無視すると問題になる。
金属でも、
- 熱膨張
- 応力集中
- 疲労
などを考慮しなければならない。
材料は“理想通り”には動かない。
⑥ メンテナンス性を考えていない
量産後には、多くの場合
- 修理
- 点検
- 部品交換
が発生する。
しかし新人設計者ほど、
「作ること」だけ
に集中してしまう。
結果として、以下のような問題が発生する。
- 分解できない
- 部品交換が困難
- 作業時間が長い
要交換部品のメンテナンス性やメンテナンス周期、要求仕様を十分考慮した設計とする必要がある。
⑦ コスト感覚がない
設計レビューでは、
「この構造、本当に必要?」「いくらするの?」「もっと単純にできない?」
などと聞かれることが多い。
設計では、常に以下のバランスを考慮することが重要である
- 品質(QUALITY)
- コスト(COST)
- 納期(DEADLINE)
QCDのバランスが重要である。加えて昨今はSDGsにも配慮する必要もある。
必要以上の精度や複雑構造は、そのままコストや納期増につながる。
そして、バランスと書いたのは、多くの場合これらがトレードオフの関係にあるからだ。
注意したいのは、設計に必要な最低限の品質を確保するために必要である場合は、
コストと納期を交渉してでも品質を譲ってはならない。
それは、最も重要な品質である「安全性」を確保する場面などで現れることがある。
⑧ CAE結果を鵜呑みにしている
CAE結果だけを見て安心するのも危険である。
レビューでは、以下を確認されることがある
- 境界条件
- 荷重条件
- 前提条件
つまり、
「その解析条件、本当に現実に合っているか?」
「何を想定して解析を行っているか」
を見られているのである。
ちなみに今回は、指摘する側の知識は問題としていないが、
個人的には、実際にエンジニアであってもCAEを理解できている人はごく少数である感覚である。
「CAEやったのになんで実際に確認する必要があるの?」
「CAEの結果で判断できないの?」
「ついでに、ここの数値も教えてよ」
こんなコメントが出てきたら、CAEを理解している人に別途、詳細を確認してみよう。
⑨ 想定外ケースを考えていない
優秀な設計者ほど、
「普通じゃない使われ方」
を考えている。
例えば、以下などである。
- 落下
- 過荷重
- 誤操作
現場や実際のエンドユーザーの使用環境では必ず想定外が起きる。
例えば、電車の開閉ドアを初めて設計した人は、駆け込み乗車で傘をドアに差し込んでくる可能性を考慮していなかっただろう。
電子レンジを初めて設計した人は、猫を乾かそうとする人がいて、まさか訴訟されて、賠償金の支払いが発生するとは考えなかっただろう。
極端であるように感じるが、普通じゃない使われ方のほうが普通なんじゃないかと思うこともあるほどだ。
⑩ 「なぜこの設計なのか」を説明できない
レビューで最も重要なのは、
設計意図を説明できるか
である。
- なぜこの寸法なのか
- なぜこの材料なのか
- なぜこの構造なのか
これを論理的に説明できないと、
設計への信頼は得られない。
見方を変えると設計要素のすべてに設計意図を説明できるように準備することが、レビューの準備であるといっていい。
大げさに言えば、線一本についても説明できるようにするということである。
個人的に心に残ったたとえ話を紹介する
・芸術家と設計者
ある日、芸術家と設計者がお互いに紙に一本の線を描く姿を見せあった
芸術家の描く線を見て設計者は言った。
「なぜそこに線が描けたのかわからない」
設計者の描く線を見て芸術家は言った
「なぜそこに線を描かなければいけないのかわからない」
どうだろうか、あくまで設計者目線の話なのだが、設計者は線1つ描くにも理由(設計意図)が必要であるということを言っている。
あくまでたとえ話ではあるので、当然、芸術家の方も線1つに理由があるだろう。
できる設計者がレビュー前にやっていること
レビューで強い設計者は、
“レビュー前に自らレビュー”
をしている。
つまり、
- 組立できるか
- 加工できるか
- コストは妥当か
- メンテできるか
を事前に自分、または担当者に確認している。
その結果、
指摘される前に潰せる
のである。
いつも指摘されることを指摘されている時間はないのである。
逆に参加者に「指摘してもらわないとレビューの意味がないぜ」くらいの暗黙のプレッシャーをかけてもいいだろう。
設計レビューは「攻撃」ではない
新人設計者の多くは、
設計レビューを怖いものだと感じる。
しかし本来設計レビューとは、
後工程での事故を防ぐための仕組み
である。
設計レビューで止まるうちは、むしろ安全である。
本当に危険なのは、
問題に気づかず量産に流れること
である。
設計レビューを通るまでは、設計者の責任のみで変更を加えられることが多いからである。
ものを作ってしまった後や最悪はエンドユーザーが使っているときに不具合や事故が起きることである。
まとめ
設計レビューで重要なのは、
「図面やCADが成立しているか」ではなく
「現場で成立するか」
である。
そしてレビューで指摘される内容には、
実は一定のパターンがある。
つまり、
見るべきポイントを知れば、改善できる
ということである。