カーオーディオのブラックな世界
- 作業難易度 :★★(ドア内装取り外し)
- 事故時の危険度:★(板金のエッジに注意)
- 体感度 :★★★★★(体感できないはずはない)
- 作業時間目安 :120~180分
- 予算 :約15,000円(スピーカ金額による)
- メンテ周期 :3~5年毎(スピーカエッジが硬化したら、音に飽きたら)
- 注意点 :他部品との干渉に注意
こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!
今回はカーオーディオについて書く。
ちょっとばかりこの世界について書いていいのか不安な気持ちもあるが、いつも通り好き勝手書いてみよう。
私は特に耳がいいわけでも、音楽について教養があるわけでもないのでほぼ直感である。
最初に320i E90のオーディオを聞いたときは、なかなか普通にならしてるんじゃないだろうかと感じた。
シート下にウーファーが標準で装備されているためもあると思う。
低音もしっかりと出ていて、ドアスピーカは10cmと小型で無理なく高音を鳴らしている。
標準でツィーターの搭載はないもののバランスがよく、何より運転していて集中を乱されない。
無理なく聞き流せる音というものであった。
この聞き流せる音という性能がカーオーディオでは特に重要であると感じている。
というのも以前所有していた車では、前オーナーによりカロッツェリアのセパレートスピーカと後付のウーファーがついていた。
そして、販売業者のオッサンがドヤ顔で「いい音鳴らしてるでしょう?」と言っていた。
しかしながら、正直な感想は、うるさいばっかりで耳障りな音が鳴っているなとしか感じなかった。
事実運転してみると耳障りな音で1時間もしないうちに頭が痛くなってしまった。
なんてひどいオーディオなんだと思ったことを覚えている。
そこで、どんな商品なのかと思い、スピーカーとオーディオプレーヤー(HDDナビ)をネットで調べてみた。
しかし、結果は総額で25万近くもする商品で、オッサンがドヤ顔するのもわかるような内容であった。
だが、実際に鳴っている音は、雑音以外のないものでもない。なぜなんだ?
よくよく考えてみると、これは耳元で無駄になっているツィーターが原因と気づいた。
思わずイラついてツイーターをもぎ取ったら、音楽を聴きながら運転できるようにはなった。
全く余計なことをしてくれたものだ。
そして、設置業者はこんなゴミに25万円もの値段をつけて、適当なセッティングをして恥ずかしくないのだろうかとも思う。
主な原因はオーディオ機器の品質ではなく、そのセッティングであったのだと今振り返れば思う。
オーディオの基本を押えよう
そんな、ひどい体験をしたことからE90のオーディオのセッティングバランスには驚いたものだ。
さすがにオプションでHiFiオーディオが設定されているだけあって、音響設計もされているようだ。
基本設計がしっかりしているから、無難な音が鳴らせるのである。
だがある日、E90のリアスピーカからは、ほとんど雑音しか出ていないことに気づいてしまったのだ。
まるでチューニング中のラジオのようなガサガサした音だ。
フロント側のドアスピーカとウーファーはなかなかいい仕事をしているが、リアスピーカーがひどすぎたため、スピーカの換装を思い立った。
オーディオの基本構成は主に下記である。
- 電源(バッテリー)
- ヘッドユニット(音源再生部分)
- アンプ(音源増幅部分)
- スピーカケーブル
- ネットワーク(ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ)
- スピーカユニット
- エンクロージャー(箱)
この中で最も音質への影響力の大きいものはスピーカユニットである。
そして、ネットワークセッティングとスピーカの設置位置である程度のオーディオセッティングが決まるはずだ。
今回はコストの関係上、ネットワークはそのままにスピーカユニットのみを変更することとした。
主な理由は下記である
- カーオーディオのためにバッテリーを変えるのは馬鹿らしい。
- ヘッドユニットは純正カーナビと一体なので変えるつもりはない。
- アンプは音が特に小さいわけではないので問題なし。
- スピーカケーブルは車内を巡っており、換装がめんどくさいのでそのまま。
- ネットワークもいじると高額なのでそのままとする。
- エンクロージャー=車体なので変更不可。
特にカーオーディオ業界では、バッテリーやアンプで音がよくなるかような広告を多く見かけるが、そんなことは極まれであるので注意してほしい。
それに限らず、カーオーディオの広告は不審なものばかりであるように感じる。
なぜバッテリーやアンプで音が良くならないのかについては、下記理由が挙げられる。
- バッテリーはオーディオとしては理想的な電源。
- バッテリーの中でもカーバッテリーは高性能。
- アンプはただの音源増幅器、音質自体を変えるものではない。
- 極端にスピーカユニット出力を変えなければアンプ交換不要。
- 音を変えるならミキサーやイコライザーを搭載すべき。
- ほとんどの人は、音に対するゴールを具体的に認識していない。
というわけで、今回はとりあえずスピーカユニットのみを交換すればよいのではないかと考えた。
特に音に対するゴールというのは重要な部分で、多くの人がどのような音にしたいのかわかっていない。
そのため、何かを変えては変わった音に満足し、飽きては何かを変える作業を繰り返す。
無限に資金があるならいいのだが、いろいろとっかえひっかえしているうちに高額品に手を出してしまうというパターンである。
あえて書いておくが、ある程度満足のできるオーディオを用意するのにそう大きな資金は必要ない。
さてどんなスピーカが乗ってるのかな
では、E90にはどのようなスピーカが載っているのだろうか。
車に乗っている純正オーディオなど申し訳程度なものがほとんどであるので期待しないほうが良い。
多くの場合は見なけりゃよかったとさえ思うことだろう。
いつもの通り早速ばらしてみよう。過去何度かやっているので、もはや恐れるものはない
内張りはがしで、シルバーのライナーをドア端から剝いでいく。
続いて、内張を留めているネジを外していく。
ドア端に内張りはがしを入れて丁寧に外していく
この時ケーブル類も外していく。
運転席側を外すとこんな感じだ。
右手上方に貼り付いている丸い物体がドアスピーカである。ナット3つを外すと問題なく外れる。
というよりもフレームではなくフニャフニャの内張についているとは、オーディオマニアが見れば真っ青である。
まあ、車におけるオーディオなどその程度で十分なのである。
スピーカコネクタは引っ張れば外れた。どちらにせよスピーカを交換すればコネクタケーブルはカットだ。
これがフロントのドアスピーカである。
直径10cm、抵抗値4Ωの3点支持固定スピーカである。
プラスチックフレームであるが、補強が入り、なかなかよくできている。
なんと、25V100μFの電解コンデンサがスピーカフレームに埋め込まれている。
コンデンサの取り外しは、かなり難しいのと電解コンデンサは寿命部品であるので、交換するしかない。
このコンデンサはパッシブネットワーク部品であり、ハイパスフィルタとして動作する。
100μFの静電容量ということは、ドアスピーカは約400Hz以上の音のみを鳴らしているようだ。
すると、シート下ウーファーのメイン守備範囲は約400Hz以下となる。
これはしっかりとネットワーク設計がされているので、まじめに設計されている証拠である。
もし16cmのスピーカをドアに取り付けて、ハイパスフィルタなしで鳴らしたならば、低音がドアを共振させて、聞けたものではない。
そのために高額な制振材をドアに貼りまくることになる。
ドアスピーカの低音をカットすることで、内張に取り付けしても十分な音をならすことができているようだ。
そして、問題のリアスピーカーも外していく。
こちらについては、説明も不要なくらい簡単にネットが外れる。
というよりもすでに外れていた。
こちらもフロントと似たようなスピーカがとりついているが、品質は明らかに異なる。
エッジは硬化してコーンがほぼ動かない。こんなのでは音が出るはずもない。
あのひどいガサガサ音は、明らかに硬化したエッジが要因のようだ。
日光にさらされ高温になる場所に設置されている。
そのため、リアスピーカは経年劣化で交換時期であったと推測する。
そして、こちらにはパッシブネットワーク用のコンデンサはない。
フロント側のものを利用している配線か、ウーファーとの位置関係上、フルレンジで鳴らしているかのどちらかだろう。
スピーカユニットを外してみると、意外なほどしっかりと作り込まれたエンクロージャーだ。
オプションでハイファイオーディオが準備されているとのことなので、そのためのベースと思われる。
オプションで用意するということは、後から簡単に交換できるようになっているということだ。
左の謎のスペースはハイファイ用のツイーター設置スペースのようだ。
オーディオについても思った以上にポテンシャルの高い車体であることが分かった。
メインスピーカユニット選び
GRS 3FR-4 Full Range 3 Speaker Driver 4 Ohm by GRS
今回のオーディオ換装のメインとなるのが、スピーカユニット選びである。
細かいことを言えば、通常のホームオーディオとカーオーディオでは、求められる性能が違う。
大きな違いは、振動と高温である。真夏には80℃近くなる車内と移動中は常に振動がかかっている。
同じ仕様で製造すること自体が間違っている。
ちなみに私は、基本的にカーオーディオを信用していないので、カーオーディオ用からではなく、通常のオーディオ用からスピーカユニットを選んだ。
以前の車でスピーカユニットをカーオーディオコーナーで選んでみたことがある。
スピーカユニットのみで1万円近くを投資してもゴミのような音しかならなかった。
さらによくあるウーファーコーンの上にツィーターを乗せるという謎の構造も理解に苦しむ。
見えるものでもないが、デザインも非常にダサい。
構造の単純なスピーカユニットなど5,000円も出せば、高級品であるといえる。
5,000円のスピーカユニットが使われているスピーカ完成品なら、10万円前後はするだろう。
完成品のスピーカは箱とネットワーク配線、設計、デザイン費用が乗っているからだ。
そんなことをいろいろ考えた結果、今回はこいつを選定した。
GRSの3FR-4 4Ω、8cm、PPコーンのスピーカユニットだ。
気になるお値段は、1,400円×4台=5,600円 ※2024年4月時点で値上げを確認
純正品は10cmスピーカであるが、バッフルを追加する予定なので一回り小さいものを選んだ。
最大のポイントとしては、4Ωスピーカであることだ。ここを譲ってはならない。
ホームオーディオには8Ωスピーカが多いが、これを入れるとスピーカからの音量が小さくなる。
単品であれば特に大きな問題は発生しないが、E90にはウーファーも搭載された2WAYのため、バランスがおかしくなる。
ちなみに今回はウーファーを変更するつもりはない。
400Hz以下の低音などという定位もはっきりしないような音は特に繊細に気にする必要はない。
そもそも設置位置がシート下という時点で気にする必要がない。
そして、8cmとはいえ再生域の性能上400Hz程度は余裕で鳴らせる。
上の再生域は16kHzとのことだが、ほとんどの人は20kHzまで聞こえないので問題はない。
ツイーター選び
どうせ聞こえないといいつつツイーターもつけてみたくはなるのが人情だ。
なぜなら、個人的にスピーカーは3WAYがちょうど良いと考えているからだ。
選定したのは、メインスピーカの横に置いてあったGRS 1TM-4 こちらも4Ωだ
1,000円×2台=2,000円
人間の可聴域である20Hz~20000Hzを1つのユニットで鳴らすことは困難である。
それは、物理的な大きさと重さによる。大きく重いスピーカを高速で振動させることはできない。
逆に小さく軽いスピーカを大きく振動させることはできない。
コイルだって通常は1つのユニットに1つである。
スピーカの数と種類が多いほど再生に有利ではあるが、コストと制御、バランスが難しくなっていく。
ホームオーディオの場合は、コスト重視なら2WAY、再生力重視なら3WAYというのが一般的と思う。
対してカーオーディオの場合は、ドアスピーカのドアでの共振防止のため、約400Hzでクロスしている。
音の高級感やキラキラ感をトッピングするために補助的にもう一つ欲しくなった次第である。
前回ツィーターではいやな体験をしているため、ほとんど鳴らすつもりはないし、耳元に置く気もない。
遠くのほうで気のせい程度に高音をならしてくれればよいと思っている。
パッシブネットワーク用コンデンサ選択
ここだけはあまりいじりたくなかったのだが、純正のものは流用できそうもないので、しょうがなくやってみることにした。
やりたくない理由はいくつかあるが、一番はコストである。
計算と理論は実に簡単であるので、設計自体はあまり悩むことはない。
問題は測定とコストである。測定は確実な測定器を持っていないのであきらめるとして、残るはコストだ。
探してみるとわかると思うが、ハイパスフィルタに使われる100μFの無極性コンデンサは簡単には見つからない。
見つけたとしても、高額であることがほとんどだ。
中でも電解コンデンサが比較的安いがそれでも電子部品のコンデンサとしては高い。
また、今回は見送るが、しっかりとやるなら、高音域カットのためローパスフィルタも追加することになる。
このローパスフィルタとなるコイルは価格にごまかしが一切きかない。
クロスオーバー周波数が低ければ低いほど巨大なコイルが必要になり高額になる。
しっかりと作られたサブウーファーやオーディオシステムが高額な理由の一つである。
今回はオーディオ専門店で以下のものを購入した。何やらコンデンサ1つでスピーカユニット並みの値段である。
- オーディオ用 無極性電解コンデンサ 100μF 1,000円×2個=2,000円
- オーディオ用 フィルムコンデンサ 2μF 1,000円×2個=2、000円
フロントスピーカ用はもとからついている100μFを踏襲、400Hz以下をカット
ツィーター用はほとんど鳴らないように2μFを選択、20000Hz以下をカット
それじゃあツィーターが聞こえないじゃんと思うかもしれないが、実際はかすかに聞こえる。
これは20000Hzが聞こえているのではなく、カットしきれなかった20000Hz以下がうっすらと漏れ出ているのだ。
これだけでも不思議と雰囲気が変わる。
フロントスピーカが出し切れない高音を補う形だ。これも鳴らしすぎると耳障りな音になる。
ここまでである程度の構想は練れたが、実際にインストールするには、まだ準備が不足である。
スピーカの設置準備
当たり前の話だが、純正スピーカーは特別なネジ穴配置のため、通常のスピーカはそのままつかない。
そのため、取り付けるためのアダプタ兼バッフルを作成する。今回はMDF材を使いこんな感じで用意した。
次に必要ないとは思うが、材料が余っていたので、音漏れ防止のため吸音スポンジエプトシーラーをスピーカフレームに貼り付ける。
まあ、趣味なので気休め程度である。明確な根拠はない。
そして、バッフルにスピーカをねじ留めすれば、インストール準備完了である。
ちなみにリアスピーカはスペースがさらに厳しいので、ざっくりバッフルを削り込んでおく。
見てのとおり気合で削り込んだ。
次にコンデンサの配線を準備する、常に振動がかかるのでしっかりとはんだ付けしておく。
ツィーター側もコンデンサを取り付けておく。
ここもはんだと絶縁処理、耐震処理をしておく。
ツィーターは耳元に置きたくないので、足元のドアポケットに無理やり入れる。
配線は背面に穴をあけて、ケーブルを通して端子をカシメる。
ツイーターはユニット背面に空気抜きの穴がないのでエンクロージャーは不要である。
以上で事前準備は完了である。
いよいよスピーカインストール
まずは、不要となったドア側のスピーカケーブルコネクタを切り飛ばす。
続いて、フロントスピーカ用の端子を圧着し、ツィーター用ケーブルを並列に増設する。
100μFのコンデンサをフロントスピーカ端子に割り込ませスピーカケーブルを接続する。
ツィーターケーブルも接続する。
リアスピーカも同様に処理する。ちなみにリアにはコンデンサやツィータは接続しない。
リアスピーカもエンクロージャーにインストール。
カバーをかぶせて完成である。
バッフルは厚み10mm以下であれば大体入るだろう。
あとフロントスピーカの後方にはフロントフィンドウが入るので、スピーカの駆動マグネットが大きいと干渉する可能性がある。
防磁型のスピーカを使用する場合は寸法をよく確認すること。
以上でスピーカのインストールは完了した。
肝心の音のほうはというと、リアの音響は著しく向上した。
フロントも耳障りでないくらいにキラキラした音になった。
ウーファーの鳴り方も大きな変化はなく、ある程度うまくいったと思う。
ただまあ、前述したとおり、音についてはほとんど知識がないので、直感である。
所感としてはやってよかったと思えるメンテナンスであった。
今回はここまでとする。引き続きメンテナンス情報を書いていくのでよろしく。
まとめ
- カーオーディオ業界に闇を感じる
- 基本的なカーオーディオに多くのコストはかからない
- カーバッテリーは理想的なオーディオ電源
- アンプは音を増幅するもの音を変えてはいけない。
- オーディオはネットワーク設計が重要