馬力とトルク何が違う

高回転型エンジン?低回転型エンジン?なにそれ?

こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう。

突然だが、馬力とトルクは何が違うのだろうか。

なんとなく以下のようなことを聞いたことがないだろうか、

  • このエンジンは低回転型だからトルクがあって加速がいい。
  • このエンジンは高回転型だから低速トルクは細いけど最高速は出る。
  • 馬力とトルクどっちが大事?

そもそも、馬力とトルクって何なのか、今回はそんな疑問をざっくりと説明してみようと思う。

結論としては、「馬力=トルク×回転数」である。

そんなことは知ってるよという声が聞こえてきそうだが、そんな当たり前のことを前提に書いていきたいと思う。

この当たり前の式を説明すると「トルク=力」、「回転数=距離」、それを掛け合わせたものが「馬力=エネルギー[W]」である。

つまり、同じ重さの車両であれば、基本的に馬力が大きいほうが加速力も最高速度も大きいということである。

簡単な例を挙げると以下である。

  • トルク=2、回転数=1のエンジンの馬力は2である
  • トルク=1、回転数=2のエンジンの馬力は2である

この時、双方の車両の加速度と最高速度はほぼ等しくなる。

つまりは、○○型エンジンだから××といった比較そのモノが無意味である。

しかし、その論争が絶えることもなく、直感的にもピンとこないというのが現実かもしれない。

だって、いくらトルクがあっても回転数が小さければ速度が出ないように感じる。

いくら回転数が高くてもトルクがなければ加速もできないように感じる。

そればなぜだろうか。

話をややこしくしてるのはトランスミッション(変速機)

いうまでもなくエンジンは車両の動力源であるが、実際に路面に力を伝えているのはタイヤである。

その間にはトランスミッションがあり、車両によって差異があるが、1~5速などと設定されているはずだ。

発車時や登坂時には変速比の高いギアを使い、高速走行時には変速比の低いギアを選択する。

つまり、トランスミッション(変速機)とは、トルクと回転数の変換装置なのである。

その変速の度合いは、エンジンの高回転型か低回転型かなど誤差レベルである。

次に実際の車のトルクスペックを思い出してみよう。

最大トルクで200~400N・m もあればスポーツカーレベルではないだろうか。

じゃあ、これってどのくらいの力というと約20~40kg・mという数字である。

エンジンの軸に1mの棒を付けて、先端に40kg以上の重りを付けると回せないのである。

これでは1000kgを超える車体を登坂させるどころではない。

しかし、実際のエンジンで発車時にエンストが起こらないのは、重さを持った軸がすでに高速回転しているからである。

要するに、どんなハイパワーエンジンでもトランスミッションがなければ、発進もできない、坂も上れないほどの超低トルク型エンジンなのである。

言い方を変えると、トランスミッションさえあれば、トルクと回転数の最適な配分が可能ということである。

つまりは、異なるトランスミッションを搭載しているのに、○○型エンジンだから××といった比較そのモノが無意味である(トランスミッションもエンジンの一部であるという場合はその限りではない)。

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馬力はどのようにして決まる

基本的に「馬力=ガソリンの熱量×熱効率」ということになる。

100のエネルギーを持つガソリンを燃やして50%を取り出せるエンジンの馬力は50である。

そして、燃やせるガソリンの量はおおよそシリンダーの大きさ(排気量)で決まるので、大抵は排気量に比例して発生トルクは大きくなる傾向にある。

あとはエンジンをどのくらいの回転数まで回せるかは、おおよそピストンスピードで決まるので、ピストンストロークに依存する。

そうなるとエンジンを設計する手順には、ほとんど選択肢がないことがわかる。

「目標の馬力を決める→必要な排気量(トルク)を決める→必要なストロークと気筒数(回転数)を決める」

例えば、限られた排気量(トルク)で、最大の馬力を出す方法は、回転数を上げることである。

具体的にはピストンストロークの短縮と多気筒化である。

しかしながら、いろいろと損失が多く、やりすぎるとエネルギー効率は下がってしまうだろうし、低回転時に十分なトルクの発生が期待できない可能性がある。

よって、合理的な車とは、必要な馬力に見合った排気量のエンジンと必要なトランスミッションを搭載した車といえる。

理想的なエンジンとはどんなもの

では、理想的なエンジンとはどのようなエンジンだろうか。

それは、熱効率が高く、すべての回転域でトルクが一定のエンジンである。高回転型でも低回転型でもない。

もし実現できたなら燃費が良く、回転の上昇に合わせて馬力の出せる、扱いやすい理想的なエンジンであるといえる。

そのため、車エンジン性能を比較するときは、トルクカーブ(縦軸:トルク、横軸:回転数)という曲線を確認するとその設計思想が見えてくるだろう。

それらをあまり目にすることがないのは、最大馬力と最大トルクのほうが印象的であるからだ。

正直って馬力やトルクの最大値比較など、ほぼ無意味といっていい値である。

通常走行時であれば、エンジン回転数はせいぜい500~3000回転である。

最大値を発生させる6000回転以上など使ってもほぼ数秒程度だろう。

しかも、その時はフルスロットルですらないだろう。

オートマチックの多段トランスミッションなら、常用回転数は、なお狭くなるだろう。

そのようにトルクカーブを比較することで、その車の本当の性能が見えてくる。

電気自動車のモーターは動力としてどうなのよ

そうなると次に気になるのは最近はやりの電気自動車である。

その動力はモーターを使用している。

そしてモーターであっても「馬力=トルク×回転数」の基本原理は変わらない。

大きな違いはエネルギー源である。

モーターのエネルギー源はいうまでもなく電気であり、その電力はバッテリーから供給される。

そして、電力[W]=電圧[V]×電流[A]であり、電圧と電流はバッテリーの性能に依存する。

つまり、アクセル全開で馬力が常に一定となる。

すると、発進時は回転数0であるのでトルクは∞、回転数が上がるほどトルクが弱くなっていく。

なんかもう、モーターはトランスミッションもいらない素晴らしい動力源であることがわかる。

これだけ見ると電気自動車の動力は理想的であるといえる。

しかしながら、今も昔も電気自動車の普及を阻んできたのは、ガソリンとバッテリーのエネルギー密度の差とそのチャージ時間である。

エネルギー効率の差を考慮しても、自動車という限られたスペースにガソリンエネルギーと同じだけの電気エネルギーを搭載することは難しい。

そして、そもそも電気自体が2次エネルギー(発電等で作り出すもの)である。

そんな課題が、今後解決されれば、電気自動車は理想的な乗り物として一気に普及するだろう。

今回はここまでとする。

本記事が楽しいBMWライフの参考になれば幸いである。

それではまた。

まとめ

  • 馬力=燃やしたガソリンのエネルギー×熱効率
  • 馬力=トルク×回転数
  • トランスミッションはトルクと回転数の変換装置
  • モーターは理想的な自動車用の動力源
  • 現時点で電気は理想的な自動車用エネルギー源ではない
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