電気自動車、燃料電池車、水素自動車はどうしたら普及するか

高らかに叫ばれる脱炭素やカーボンニュートラル

こんにちは、今回はガソリン自動車以外の新様式の自動車について書いていく。

2021年にわかにガソリンエンジン車廃止の声が上がるようになってきている。

脱炭素が掲げられ、その一端となるガソリンエンジン車の廃止が声高に叫ばれているのだ。

そんな中、ついに近い将来ガソリン自動車の販売を0とする宣言が各国、および各社より出された。

個人的にこれはかなり衝撃的な内容であったと記憶している。

たしかに、地球環境を守ることは非常に大事であるが、そのためにガソリン車を廃止するという考え方にはやや疑問がある。

実際にそれが可能なほど、技術革新は進んでいるのだろうか。

もし、ガソリン車の廃止が実現可能であるなら、私の認識は所詮は時代遅れであったということなのだが、実現できればまさに素晴らしいことである。

振り返ってみれば、1870年代にガソリン自動車が走り始めて以来、ガソリン自動車は数々の環境問題の圧力を跳ね返してきた。

その150年を近い歴史の中で、ガソリン車は常にそのメインストリームを譲ることはなかった。

実際に20世紀の感覚からすれば、21世紀を迎える2001年には電気自動車だらけであると思っていたのではないだろうか。それどころか車は空を飛んでいると思っていたくらいだ。

いうまでもなく過去にも電気自動車はもちろん、水素を発電に用いた燃料電池車や水素を燃料とした水素自動車が次世代自動車として盛り上がったことも幾度かはあった。

しかし、21世紀に入って20年以上たった今、ガソリン自動車以外で実用化、量産化してビジネスとして成功しているのは、せいぜいハイブリッド車くらいである。

そして、2020年代現在はもっぱらテスラをはじめとする電気自動車が話題の中心といったところだ。

なぜいつまでたっても代替燃料は普及しないのか

そうはいってもハイブリッド車は、つまるところガソリンを燃料とした自動車である。

しかし、ガソリンや軽油燃料とした車がここまで普及したにもかかわらず、なぜ、電気自動車をはじめとしたガソリン車以外はいつまでたっても普及しないのだろうか。

それはガソリンや軽油が他の追随を許さない優秀な燃料であるからだ。

ガソリンや軽油が自動車燃料として優れている点を思いつく限りを並べてみる

  1. 常温、常圧で液体で扱いやすい
  2. 保存可能期間が長い
  3. エネルギー密度が高い
  4. コストパフォーマンスが良い
  5. 燃料補給時間が短い

見方を変えれば、代替燃料が普及しなかった原因はたったこれだけのことであるといえる。

たったこれだけのことが他の燃料では、ガソリンや軽油に大きく届いていなかったのだ。

ガソリンと軽油が燃料として非常に優秀であり、それが当たり前すぎて気づきにくいだけのことである。

つまりはこれらの課題を解決し、かつ脱炭素を実現できれば、晴れて新エネルギー車の普及が爆発的に進むことになる。

そして、今一度問い直してみよう、代替燃料や新方式はこれらの課題を解決できる提案であるかどうか。

同時に人間は弱い生き物なので、損得を抜きには決断が難しい。

例えば、新しい習慣として一昔前よりクールビズが普及している。その背景には、多くの人にとって好都合であったという事実がある。

クールビズ導入により、会社は経費が削減できて都合がいい、社員はネクタイをしない理由ができて都合がいい。ついでに環境負荷低減になって都合がいい。そんな背景からクールビズは普及したのである。

仮にクールビズ導入により、会社の経費が1%上がってしまうような施策であれば、普及はしなかっただろう。

そんな経済的な事情が、自動車燃料の世界でも言えるのだ。

水素や電気自体が燃料として悪いわけではない。単純にガソリンよりも高く手間がかかるだけである。

さらに言うなら、水素も電気も効率的かつ安価に作り出すためには石油燃料を使用することになる。

個人的見解だが、脱炭素かつ大量のエネルギーを生み出せる可能性のある方法は、現時点で原子力発電だけだ。

つまり、本当の意味で脱炭素社会を実現するために原子力を除いた提案は、かなり非現実的であるといえる。

そのように、はっきりと言っているところはほぼないと思うが、現在現実的に考えられる脱炭素社会とはそういうことである。

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水素は燃料としてだめなのか

結局水素は燃料としては使えないのだろうか。

結論として、水素は燃料として根本的にはだめではないといえる。なぜならば、ガソリン自体もその成分中にある水素を燃やしているだけだからである。

つまり燃料として考えるならば、水素と空気中の酸素があれば事足りる。しかし、実際問題として水素単体では、なぜ燃料として適していないのだろうか。

その理由が下記である。

  1. 常温、常圧で気体で扱いにくい
  2. 長期保存が難しい
  3. 液体状態でもエネルギー密度はガソリンの1/3
  4. 液体状態の水素は低温(-253℃)で触れることができない
  5. 水素単体を作り出すめに大量の電力が必要でコスト高

要するにとにかく取り扱いが難しく面倒なのである。

よく言われている爆発するから安全性を確保できないや水素ステーションが少ないからなどという理由ではない。

爆発や火災の危険度でいえば、むしろガソリンのほうが危険なくらいだ。そんな取り扱いにくさの主な原因は、水素の分子の小ささと軽さである。

その元素番号は1番、つまりはあらゆる物質の中で最も小さく軽い物質なのである。

そんな小さく軽い水素は、一定か所にとどめておく事が自体が難しい。そんな取り扱いの難しさが水素燃料の限界を感じさせるのである。

この問題を解決するためには、水素分子を通さない物質か、何かしらの方法で水素を通さない方法の発明が必要だ。

仮にガソリンのように液体として水素を扱えたとしても、その温度は常圧で-253℃のため素手で触れることすらできない。

水素をタンクに液体として保存するのなら、常温の場合15~20MPa(150~200気圧)に維持する必要もある。そして、小さな水素は金属の分子間に入り込み水素脆性を発生させ金属を劣化させる。

そのため、トヨタのMIRAIの水素タンクはカーボンなどの非金属を用いて課題に向き合っている。それでも高額な水素タンクの定期交換が必須である状況を考えるとなかなか難しい課題であるといえる。

上記課題をクリアして、水素をまるでガソリンのように扱えたとするならば、水素は代替燃料として十分に使用可能である。

ちなみに世間で言われているように、水素エンジンは燃焼の過程で二酸化炭素を出さないかもしれないが、窒素酸化物NOxの生成は避けられないので、こちらも忘れてはならない。

何も二酸化炭素だけが温室効果ガスではない。

電気は動力源としてだめなのか

では、電気は何でダメなんだといわれそうだが、こちらも根本的にはだめではない。

そもそもだめじゃないから実際に日産のリーフをはじめとする電気自動車が量産までされている。

そして、水素燃料よりはだいぶ現実味がある選択肢といえる。

しかしながら、ガソリンと比較するとまだ課題が残されているのも事実だ。

思いつく理由が下記である。

  1. 電子は目に見えない、触ることができない
  2. 長期保存が難しい(自然放電)
  3. エネルギー密度でガソリンに劣る
  4. 発電時にカーボンニュートラルじゃない可能性が高い
  5. 充電に時間がかかる

上記課題のうちバッテリーが技術革新して、エネルギー密度と充電速度がガソリンに近づけば、十分使用に耐えうるだろう。

まあ、バッテリーがこの世に登場して以来、永遠のテーマでもある。

電気自動車については、コストと時間をかければ、実用に耐えうるだろう。

中国では、バッテリーユニットの交換を行うことで充電時間を排除し、そのサービスステーションの数を増やして対応している。

また、モーターの特性として、低速から最大トルクを発生させる性質はとても自動車に適している。

さらに、静かで振動も少ない電気自動車は、水素に先駆けて普及する自動車であると感じる。

最後に電気の発電時に火力発電を使う場合、二酸化炭素を排出していることも忘れてはならない。

太陽光発電や風力発電なども考えられるが、その単位時間当たりの発電量は火力には遠く及ばないと推測される。

これらの課題を一つ一つ解決していくことで、ガソリン車は初めてその役割を終えることができるだろう。

根本的にして最初の課題は圧倒的エネルギー不足

代替燃料以前の問題として、脱炭素には圧倒的なエネルギー不足を解決する必要がある。

ここ日本において日常を過ごしているとエネルギー不足など感じないかもしれないが、ガス、石油、石炭などの火力発電を除いた状態では、日々生活するエネルギーすら賄うことができていないのが現実である。

そんな状態に加えて、自動車の燃料を電気や水素に変えようといっているのだ。そして、バッテリーの充電はもちろん、電気分解により水素を作り出すには大量の電気が必要である。

では、どのくらいのエネルギーが足りていないのだろうか、まずは、現状の確認と必要なエネルギーを試算してみよう。

経済産業省のデータによると下記とのことだ。今後さらなる増加が見込まれている。

  • 世界のエネルギー年間使用量:約140億t(石油換算、2018年)
  • ガス、石油、石炭の割合:23.9%+33.6%+27.2%=84.7%
  • 原子力、水力、その他再生可能エネルギーの割合:4.4%+6.8%+4.0%=15.2%

ここで、原子力を除けば、現状の発電量の約11%が再生可能エネルギー、つまりは脱炭素エネルギーであるといえる。

つまり、ざっくり水力、風力、太陽光などの発電量を今の約9倍に増やせば、安全な脱炭素社会の到来となる。

なーんだ、簡単じゃないかと思うだろうか。

次に、このデータを基に具体的に必要なエネルギー量を試算してみよう。

  • 石油の1tあたりのエネルギー量:42GJ/t
  • 脱炭素のために必要なエネルギー量:140億t×42GJ/t×0.847=0.498×10^21J

ちなみにM(メガ)が10の6乗、G(ギガ)が10の9乗である。T(テラ)P(ペタ)E(エクサ)と続く。

この感じで換算すると2020年時点で0.498ZJ(ゼタジュール)が脱炭素に必要なエネルギー量ということになる。

これは当然、2020年時点でのエネルギー消費量と原子力発電量が現状維持している前提の試算である。

経済産業省のデータには発電方法別のコストも掲載されている。

  • 石炭  :12.5円/kWh
  • LNG  :10.7円/kWh
  • 石油  :26.7円/kWh
  • 原子力 :11.5円/kWh
  • 陸上風力:19.8円/kWh
  • 洋上風力:30.0円/kWh
  • 太陽光 :12.9円/kWh

意外にも太陽光発電のコストは石炭やガスなどと同程度(10.7~12.5円/kWh)であるものの、設備の耐用年数や敷地面積などは課題がある様子。

原子力のコストも同程度(11.5円/KWh)である。

風力などは高めのコスト(19.8~30.0円/kWh)であるが、将来的には削減できるようだ。

なんとなく設備の初期投資額やメンテナンス費用が入っていないようにも思うが、詳細は気にしないことにしよう。

風力、太陽光発電には設置場所と設備の初期費用とメンテナンスが課題として残りそうである。

これらの課題を一つ一つクリアすることで、代替燃料の時代がやってくるのである。

個人的見解であるが、水素よりは電気自動車のほうが、まだ実現性があるといえる。

電気からさらに1手間必要な水素燃料自動車の時代は、電気自動車のさらに先になるだろうと予測できる。

今回はここまでとする。引き続き自動車関連の記事を書いていくのでよろしく。

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