バッテリーも疑ってみた

今回は結果的に原因ではなかった整備記録である。
しかし、故障診断においては「原因を見つけること」と同じくらい「原因ではないことを確認すること」が重要だ。
前回までで、エンジンストール症状が出て以下の対応をしたが大きな改善は確認できなかった。
- カムシャフトセンサー交換
- PCV交換
次に簡単に対応できて、疑わしいのがバッテリー電圧の低下である。
直接的にはクランクシャフトセンサーのエラーであるが、電圧低下による誤作動の可能性も考慮したのだ。
ただし、バッテリー電圧低下のエラーが出ているような状態ではなかった。
交換もトランクを開ければ簡単にできる。
さらに言うなら、前回交換から6年半以上経過しているため、バッテリーについても交換時期といえる。
結果としては、エンジンストール症状とアイドリングのばらつきは改善せず、バッテリーの影響は少なかったと考えられる。
しかし、電圧の安定はセンサー類の動作安定や寿命に影響する可能性があるので、定期交換がおすすめだ。
今回の6年間はさすがに使いすぎだと思うので、4年くらいで交換を検討しよう。
最後の交換から6年半経過していた
前回バッテリーを交換したのは2019年、走行距離約60000kmの時だった。
今回交換したのは2025年、走行距離130000km。
使用していたバッテリーは、BOSCH SILVER X SLX-7Cである。
すでに6年半以上使用していることになる。
一般的にバッテリー寿命は3~5年程度と言われるため、年数だけ見れば十分交換時期だ。
エンジンストールとの直接的な関係は不明だったが、
- センサー電圧の低下
- 始動時電圧降下
- DME制御への影響
などを考えると、一度交換しておく価値はあると考えた。
ちなみに、2010年新車時は純正バッテリー搭載で、2019年、約9年経過でバッテリーエラーが出ている状態であった。
バッテリーチェッカーでバッテリーの状態をチェック

バッテリーの劣化状態を外観から確認することは容易ではない。
知っての通り、バッテリーはただの樹脂の箱にしか見えない。
電圧だって充電直後は問題のない数値を示すだろう。
バッテリーの構造は単純ながら、中身は液体の薬品、希硫酸でとても繊細だ。
使用状態や条件でその寿命は大きく変わるだろう。
そこで、バッテリー性能の目安となるのがCCA(Cold Cranking Ampere)である。
これは低温時にどれだけ大きな電流を流せるかを示す指標で、エンジン始動能力の目安として用いられている。
各バッテリーにCCAの仕様値があり、経年で劣化していく。
そして、CCAを計測するためには専用のバッテリーチェッカーが必要だ。
しかし、バッテリーチェッカーは便利だが、測定結果だけで寿命を断定できるわけではない。
最終的には使用年数や使用環境も含めて判断する必要がある。
そのため、あまり考えずバッテリーは4年程度で交換してしまってもいい気がする。
今回のバッテリー状態の測定結果は以下のとおりである。
- CCA測定 400A
- 健全性 50% (CCA:400/790)
- 停車時電圧 12.52V
電圧、CCAともにギリギリ始動や動作に問題ない数値と推測されるが、劣化度合いを示す健全性は50%
バッテリーの仕様値であるCCA790から約半分くらい性能劣化しているとの判定だ。
個人的な感覚としては、バイクのバッテリーと比較して、大きい分高性能であるなと感じた。
バッテリー交換時の注意点
バッテリー交換自体は難しくないが、いくつか注意点がある。
特にショートやメモリー消失に関わる部分は事前に確認しておこう。
- バッテリー端子は必ず+側がバッテリーにつながっている状態を意識する
- 横倒し注意
- バッテリーを外すとメモリーは消える
- 必要であれば予備電源でメモリー確保
- バッテリー容量を大きく変えると別途ディーラーで設定が必要
バッテリーは静かなので、あまり危険を感じないが、2Lエンジンを回すだけのパワーを持っているため、ショートさせれば十分に危険である。
バッテリーを外す時はマイナス端子から外し、取り付ける時はプラス端子から取り付ける。
必ず赤いケーブルがついている状態を意識しよう。
これにより不意のショートを防げるだろう。
そして、バッテリーは基本的に横倒しはできない。内部の薬品、希硫酸が漏れ出る可能性がある。
バイクのバッテリーが横倒しOKなのは、密閉型の特殊仕様であるからだ。
続いて当たり前だが、バッテリーを外すと全電源がOFFになる。
メモリーがリセットされるので、気になる場合は予備電源でメモリー確保しよう。
具体的には時計や学習結果といったところだろう。
私は特に気にせず外してしまったが、特に大きな問題にはなっていない。
最後に、バッテリーの容量を大きいものや小さいものに変更するとエラーとなる場合があるらしいので、同等品を選んでみよう。
参考にボッシュの対応表を確認した。新車搭載はLN2であったのでワンサイズ大きなもの(SILVER X SLX-7C)にしたが特にエラーは出ていない。
もしエラーが出た場合はディーラーに相談しよう。バッテリーの登録設定を変えてくれるはずだ。

BMW E90のバッテリー交換で登録は必要?
今回の320i(N46)では、純正LN2→SLX-7C→SLX-7Cへ交換後も特にエラーは発生しなかった。
ある程度の幅は許容されているようだ。
ただし車種や年式によっては、バッテリー登録が必要な場合もあるので、不安な場合はディーラーやBMW対応診断機で確認すると安心だ。
今回の車両では登録なしでも問題なく使用できているが、BMWは年式や仕様によって条件が異なるため、最終的には自己責任で判断してほしい。
バッテリー交換手順

具体的な交換手順としては以下である。
- トランクを開ける
- トランクルーム内の内カバーを外す
- 固定用のバーを外す
- マイナス端子を外す
- プラス端子を外す
- バッテリーを交換し逆の手順で組み立てる
- エンジン始動確認
まずはトランクを開けよう。運転席右下のトランク開放ボタンを押下するか、トランクのとってを直接引いて開放する
次にトランクルーム内の向かって右手にある書類置き場が内カバーとなっている。黒いつまみを90度まわして引くとL字のカバー取れるだろう

黒い金属の固定用のバーを外す。ボルト2本で固定されている。下側にも銀色の固定金具があるので外しておこう
バッテリーは基本的にこの2つの金具でのみ固定されている。

マイナス端子を外す、こちらは容易に外すことができるだろう

マイナス端子を外して、ショート防止したら、プラス端子を外す。
こちらの赤い樹脂プレート事外れるので、慎重に作業しよう。
銀色の板バネで強力に固定されている。長いマイナスドライバーなどで外すことができるだろう。

バッテリーを交換し、逆の手順で組み立てる。
バッテリーは20kg近い重量がある。腰を痛めないよう慎重に持ち上げよう。
ありがたいことに取っ手も付いているが、かなり頼りない
最後に車両の電源が入ることを確認し、エンジン始動を確認、時計などを再設定したら出来上がりだ。
バッテリー交換後の変化
交換後はセルモーターの回転がやや力強くなった印象はあった。
また、学習がリセットされたためか、走行フィールが微妙に違う気もした。
しかし、肝心の期待していたエンジンストール症状やアイドリングのばらつきについては変化がない。
さらに数日様子を見ても症状は継続していた。
この時点で、
「原因はバッテリーではない」
という判断ができた。
故障診断では原因を見つけることも重要だが、原因ではない部品を一つずつ除外していくことも同じくらい重要である。
結果的にバッテリー劣化は原因ではなかった
結果としてエンジンストールの原因はクランクシャフトセンサーだったため、バッテリー交換自体は問題解決にはつながらなかった。
しかし、この交換によって電圧低下やバッテリー劣化による誤作動の可能性を排除できたことは大きい。
原因究明では「正解を見つける」だけでなく、「不正解を消していく」ことも重要である。
故障診断は、原因をいい当てるゲームのようなものではない。
地道に可能性を一つずつ消していき、最後に残ったものが原因であることが多い。
複合要因が考えられる場合はなおさらである。
今回のバッテリー交換も、結果的にはそのための作業となった。
それでも交換してよかった理由
- 6年半使用していた
- 予防整備になった
- 電圧低下の可能性を排除できた
- エンジンストール原因の可能性を一つ潰せた
結果的に故障原因ではなかったが、予防整備と原因切り分けの両面で意味のある交換だった。
まとめ
今回のバッテリー交換ではエンジンストール症状は改善しなかった。
しかし、
- 6年半使用したバッテリーを更新できた
- 電圧低下の可能性を排除できた
- 原因究明を一歩前進させることができた
という意味では十分に価値のある整備だった。
結果的な主原因はクランクシャフトセンサーだった。
しかし、そこへたどり着くためには、バッテリーという可能性を一つずつ消していく必要があった。
故障診断とは、正解を探す作業であると同時に、不正解を消していく作業でもある。


