ムーブメントに詰め込まれた溢れるロマン
こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう。
今回はアンティーク機械式時計の魅力について書いていく。
アンティーク機械式時計の魅力はなんといってもその美しいムーブメントとその中に詰められたロマンである。
時計そのものが高級品であった時代、時計は宝飾品で富の象徴であった。
同時にその時計の正確さは、技術力の証明でもあり、贅と技術を集結して、時計作りが行われていた時代があった。
そんな時代に生み出された時計は、ファッションとなった現代の時計とは一線を画す。
1900年代に入ると技術の進歩は高性能の時計を安く大量に生産することを可能にした。
結果として時計は、大富豪でなくとも手にできるものとなった。
同時に、必要以上に豪華な装飾や非合理的な構造は無駄として切り捨てられてきた。
電車の運行や戦争の道具として用いられ、重要なインフラの一部として使用された。
1970年代にはクォーツ腕時計の普及が時計の精度課題を一掃し、さらにコンピューターの普及と進化が生産コストを削っていった。
1980年代においては腕時計はファションとなり、誰でも時間を容易に知ることができるようになった。
2000年代以降になると時計は携帯電話やPCのおまけ機能であり、いたるところに正確な時刻を示す時計があふれている。まさに時計のハイパーインフレ状態であるといえる。
そんな各時代の熱い思いやストーリーを感じながら時を共にすることができる。
そんな他にはない喜びを感じることができるロマンチックなツールがアンティーク機械式時計である。
おすすめとしては、量産対応が明確になった1900年代以降からクォーツショックの1960年代後半までの機械式時計だ。
なぜなら、量産品つまりは工業製品であることで、確かな品質と手ごろな価格の時計となる。
いくら古いとはいえ、完全オーダーメイドの時計は、いまだ一般市民が趣味で購入するには、品質、価格もにハードルが高いといっていい。工芸品として手にする分には問題ないだろうが実用品ともなると厳しい部分は否定できない。
そうかといって、クォーツショック後の機械式時計は品質は確かで、価格も手ごろであるが作り手の情熱を欠くといった部分を否定できない。
なぜなら、クォーツ式時計は機械式時計の創意工夫をすべて無に帰すようなスペックであったからといえる。精度、駆動時間、耐久性、機能、コストどれをとってもクォーツ式時計は機械式時計の完全上位互換であるからだ。合理性でいえば、クォーツ時計が存在する時代で機械式時計の存在価値はない。
そんなものに情熱を傾けられる人はそう多くはないことは想像に難くない。
そのため、最も機械式時計が成熟した時期が、生産技術が発達し始めた1900年~クォーツ式時計が普及するまでの1970年頃であったといえる。
現代では機械式時計はクォーツ式時計とは別ジャンルで扱われて、一部の趣味や宝飾として扱われている。
時計としての機能に期待しない
「世界で最も優れた時計を作る」そんな熱い思いをまとったアンティーク時計であるが間違えてはいけない点がある。
それは美しいムーブメントと溢れ出るロマンを除き、時計としての存在価値はほぼないという事実である。
根本的なことであるが、より正確な時刻を知るということが、時計の基本機能である。
時計に求められる基本機能は下記である。
- 正確な時刻を知れること
- 時刻が確認しやすいこと
- 可能な限り長く故障せず稼働すること
上記の時計の基本機能という点に限ってみれば、アンティーク機械式時計の存在理由はない。
特に正確な時刻と長い稼働時間においてクォーツ式時計が存在する現代では比較にすらならない。
古いがゆえに部品の摩耗であるとか、工作精度が悪いとかの要因も確かにある。
しかし、摩耗がない新品で、理想的な工作精度の部品で作ったとしても結果は変わらない。
そのくらい、覆せないほどの圧倒的な差があるのだ。
開発・製造技術の進歩によりデザインの洗練とその自由度も広がっているため、視認性も多くの場合は現代のものが勝っている。
具体的に例を挙げると精度が重要だと思う人は電波時計などが選択できる。
耐衝撃性、防水性などの堅牢制が重要だと思う人はG-SHOCKなどが選択できる。
止まらないことが重要だと思う人はソーラーバッテリーの時計が選択できる。
とにかく多機能な時計が重要だと思う人はアップルウォッチが選択できる。
極論すれば、携帯電話があれば時計はいらないだろう。
上記を理解したうえで、なおもアンティーク機械式時計が人の心を揺さぶるのは、その情熱とロマンに他ならない。
「今何時?」「だいたい10時くらい」このやり取りに電波時計は必要ない。
そんな人にアンティーク機械式時計はぴったりである。
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広告腕時計は不要なのか
アンティーク機械式時計に限らず現代では腕時計そのものが不要品となりつつある。
なぜならそこら中に正確な時計があふれているからだ。
スマホにパソコン、学校、職場、駅、バス、電車、銭湯でさえ時刻を知ることに苦労しない。
確かに懐から携帯電話を出して時間を確認するのはエレガントでないという説もある。
しかし、その動作は、最もエレガントとされる懐中時計の時刻確認動作と同様である。
むしろ戦争中の時間確認ツールに起源を持つ腕時計。
それを確認する動作の方が歴史的観点からは野蛮な動作である。
20世紀前半の腕時計のサイズは現代と比較すると驚くほど小さい。
それは、確かに邪魔にならないこと、0型の小型懐中時計ムーブメントを流用したこともある。
しかしながら、エレガントではない無精を隠したいという心理からではないかと推察する。
そんな21世紀にわざわざアンティーク時計を選ぶ方は、とてもロマンチックで魅力的な感性の持ち主であるといえる。
時計は工芸品から工業製品へ
アンティークな時計と現代の時計を比較すると明確に異なる部分が多く存在する。
現代の時計は宝飾品や工芸品という側面よりも工業製品としての側面が強くなっている。
それは、懐中時計から腕時計に時計の主流が変化した1900年代ごろから加速している。
確かに技術の進歩している現代において、当時と同様のものを作ることは可能である。
しかし、時代背景や生産技術、需要、流通など多くの要因により、1960年代以前の仕様で時計を製作することは難しいのが現実である。
わずかな人が多くの資金を投資して個人時計師に特注する形になる。
昔から基本的に時計は時刻を知るためのものである。
そして機械式時計であれば歯車とバネという極めて単純な構成部品の集合体である。
そして、部品点数もそれほど多くはなく基本構造も変わっていない。
つまりは、十分な工作精度の技術が確立していた20世紀以降に限って言えば、時計とは本来それほど高級品である必要がないのだ。
アンティーク時計は、ゼンマイを巻かなくてはいけなかったり、オーバーホールが必要だったりする。
正直いって面倒くさいのだ。
そんなめんどくささや非効率にも喜びを見いだせる人は、ぜひとも使ってみよう。
歴史的なストーリーと思いを纏う
機械式時計は長きにわたり、精度の追求や追加機能を加えることで技術競争のシンボルとして使われた。
また、高級材料を使用し磨き込むことで宝飾品として使われた。
さらには所有者のステイタスシンボルとして、当時の技術と資金が注ぎ込まれていた。
現代で例えると車のようなポジションであったと思う。
結果として21世紀では見ることが難しいような美しく工夫を凝らしたムーブメントがアンティーク時計には多く見ることができる。
なかでもオススメは鉄道全盛期1900年代以降のアメリカの懐中時計と1950年代以降のセイコー。
コストパフォーマンスと実用性のバランスが優れている。
私を含めたアンティーク時計の入門者としては手が出しやすいカテゴリーである。
興味のある方はこのあたりから試してみると良い。
きっと素敵な世界を見せてくれるツールとなる。
今後もメンテナンスや時計の情報について書いていく。
今回はここまで、それではまた。
まとめ
- 魅力的な美しいムーブメント。
- 歴史とストーリが詰め込まれたロマン。
- 小さなことを気にしない大きな器を表現できる。