組立がいのある部品点数
- ブランド名:セイコー
- モデル名:セイコー5スポーツ
- ムーブメント型式:Cal.7019
- 振動数:21600回/h(6振動、3.0Hz)
- 使用石数:21石
- 発売年:1969年
- ケース:ステンレスケース
- ラグ幅:19mm
こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!
今回はセイコー5スポーツcal.7019の組立を実施していく。
作業的には分解よりも組立のほうが難しいので根気よく丁寧に作業しよう。
また、部品の洗浄は超音波洗浄機があると楽である。
ただし、ルビーにクラックはいっていたり、接着剤で固定されている部分は破損するので注意すること。
私の場合は、経験上アンクルと1番車は超音波洗浄しない。
理由はアンクルについては、過去に接着剤で固定した時計師がいる可能性を考慮している。
1番車はオイルではなくグリスが塗られているため、超音波洗浄機では落としきれない可能性を考慮している。
分解した部品をオイルアップしよう
洗浄した部品の回転部分を中心にオイルを注油していく。
テンプの軸はほんの少しの抵抗の増加で動作がおかしくなるので注意深く作業する。
オイルが少なすぎれば潤滑できず、多すぎたり、硬すぎると抵抗となり、作動不良となる。
いい感じの硬さと量を見極めよう。高振動機ほどセンシティブになっていく。
何度か書いているが、設計者から見た機械式時計において、高振動化はメリットよりもデメリットのほうが多いものであると認識しておこう。
ざっくりと汚れを落とし、乾燥後にオイルアップをした。
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広告順次部品を組み付けていく
まずは一番奥に来る2番車を設置する。
これは特に問題なく作業完了するはずだ。
中心にある小さな歯車がかなりしっかりしていることから、1番車の不意のトルクを受け止める設計であろう。
この時期になると生産技術の向上が見て取れる。
まだ、コンピューターによる設計は追いついていないように見えるが、コスト低減と大量生産の対応をしているようだ。
アンクルを設置する。
アンクルを固定するプレートを設置する。アンクルが首振りすることを確認してからネジを締め付ける。ここで焦り、アンクルの軸やルビーを破損すると動作不能は避けられない。
ガンギ車を設置する。いつ見ても不思議な歯車だ。
2番車を押えるプレートを設置する。特に難しいことはないはずだ。
テンプの取り付けは特に慎重にする
テンプを設置する。抵抗なくテンプが振れることを確認したらネジを締め付ける。こちらもアンクルと同じで、軸が折れると振れなくなってしまう。
特にヒゲゼンマイと呼ばれる渦巻き状のものは最も繊細な部品であるので細心の注意を払うこと。ここで時計の精度が制御されている。
天輪が金メッキされていることも7S系とは異なっている。
1番車を設置する。一気に組みあがってきた感が醸し出される。
70系に見られる不思議なコハゼを設置する。分解時には取り忘れているが、香箱をまたぐように設置されている。
3番車と4番車を設置する。構造は一見複雑であるが、組み立て性はかなり進歩している。ちなみに分解時は、この3番車も欠品下状態であったので、部品取り機から融通する。
歯車の軸が嵌まっていることを確認して、プレートを固定する。角穴車も設置固定する。
マジックレバーの先にある歯車を固定する。留めネジは3本線が入っているので、逆ネジである。
分解前はこのネジが欠品していたので適当な部品取り機から融通した。
これでメイン部分の組み立ては完了だ。続いて文字盤側を見ていこう。
文字盤側の組み立て
ここの構造が実に複雑で、再現できるか不安になってくる。
まあそのためのこの記録であるので、じっくりとやっていこう。
まずは嵌まる歯車を順番に組んでいく。
今組んでいるのは、日付表示リングを回す機構だ。
ツツカナを圧入する。これは分針を回している部品だ。2番車の軸にはめ込み、2番車と摩擦で連結されている。ここの調整も微妙で、ツツカナが緩すぎると機械は正常に動いているのに時間がずれる。
逆に、嵌め合いがきつすぎると軸に組み込めないか、時刻調整時のリューズがやたらと重くなる。
何度かツツカナを破壊してしまったことがあるので、調整の際はとても慎重に実施しよう。
どんどん歯車を嵌めていく、名前はわからないが小さい奴を嵌めている。
時針を回す歯車を設置する。この歯車はこの時点ではフリーなので、隣の歯車とかみ合っていることを確認しよう。日付表示リングを押えるバネも設置しておく。
カレンダーリングの取り付け
日付表示リングを設置する。バネをかみ合わせておけば、ここではOKだ。
おさえるプレートを設置する。
曜日表示リングを回すであろう部品を設置する。
曜日表示リングを押えるバネを設置する。
曜日表示リングを設置して、Cリングを圧入する。この時、リングに空いた穴から、裏面にあるバネを上げると設置が完了する。
リューズのプッシュによる曜日早送りとリューズ2段引きによる時刻調整、リューズ1段引きによる日付早送りができることを確認する。
文字盤の取り付け、ケースへの取り付け
文字盤を設置して裏面2箇所の干支足を固定する。
ベゼルを取り外し洗浄した、防水リング回り。
風防ガラスは傷だらけであったので、適当なアクリル風防で代用する。どうやら、この青いリングはリューズ操作で回るようだが、使用用途が不明なのと、ギア欠品により放置する。
ムーブメントをケースに収め、リューズを設置。稼働確認、歩度調整を実施。特に問題なく稼働することを確認した。
ハンマーを設置してネジを締め付ける。こちらも自動巻きされることを確認する。
スクリューバックケースの裏蓋を締め付けたら出来上がりである。
スクリューバックではあるが、とっくに防水パッキンは劣化しているだろうから、非防水扱いで使用すること。
組立完了!SEIKO5復活
ベルトを組み上げて完成だ。針はセイコー5のものを代用した。
基本設計が同じなので、いい感じになじんでいるように見える。
秒針はもともと赤色らしいが、私は、この黄色が気に入った。
この量感ある不思議なケースも最近ではあまり見ないが、磨き上げることで魅力的な表情を見せる。
コツとしてはエッジ部とベゼル部を丁寧に磨き込むときれいに仕上がる。
私は面倒くさがりなので、軽く磨いて終了だ。
メンテナンス前と後では、かなりいい感じに復活できたと思う。
また、私の個人的な思いであるが、ハードレックスガラスというものが好きではない。
風防はアクリルかサファイアガラスにしてほしいと思う。
ハードレックスガラスは、サファイアガラスほど硬くないけど、アクリルよりは硬い。
言い換えるとサファイアガラスより傷はつくが、アクリルのように研磨できない。どうにもならない。。。
実にメンテナンス泣かせの素材だ。研磨しても白く曇るだけで透明度は戻らない。
まるで塗装面を研磨して地が出てきてしまったような感じだ。
まあ、どうせ防水性能は皆無なのだから、今回はアクリル風防で問題ない。
それにこのケースにはドーム風防がよく似合う。
ハードレックスガラスの研磨については別記事で書くことにする。
本内容がステキな時計ライフの一助になれば幸いである。
それではまた。
明工舎製作所 MKS 10本組色付ドライバー