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名機SEIKOロードマチック cal.5606

1960年代のSEIKO傑作ムーブメント

こんにちは今回はSEIKOロードマチックについて書いていく。

1960年代といえば、1969年世界初のクォーツ式腕時計アストロンの登場まで、機械式時計が最高精度を競っていたような熱い時代である。

そんな中で、当時では先進的なデイデイト表示と自動巻き機構を装備した準高級機の位置づけで登場したのが諏訪精工舎のcal.5606ロードマチックである。

56系ムーブメントの最大の特徴は、標準化設計による品質向上、量産化、スケールメリットによる原価低減である。

標準化設計のメリットをわかりやすいところでいうと、グランドセイコーというハイエンドから、次点のキングセイコー、準高級機のロードマチックと同一ムーブメントを使用しているのである。

当然、精度や部品材質、振動数、石数などで差別化を図られてはいるが、私が見る限り、大同小異、設計的には同一である。ギアの大きさも設置位置も変わらないのだから、価格ほどの設計品質の違いがないのは明らかである。

前身となる44系ムーブメントではグランドセイコーとキングセイコーは同一ムーブメントが使用されていたが、準高級機であるクラウンスペシャルは全く別のムーブメントが使用されていた。

グランドセイコーの設計品質を準高級機であるロードマチックに反映させたうえで、生産数量を増やして全体的な原価低減を図ることのできる経営判断であったといえる。

実際にハイエンドのグランドセイコーと同等ムーブメントであることが営業トークになっていたはずだ。高度経済成長であったこともあり、現在でも相当数量の流通がある。

実際にロードマチックは品質という面でとてもお買い得であったことは想像に難くない。

さらに、量産化を実現するため組立部品の低減と組み立て性の向上が行われている。SEIKO渾身のモデルであっただろう。

反対に、これまで専用ムーブメントであったグランドセイコーから見れば、下位モデルと同様のムーブメントは少々残念に感じたかもしれない。

44系ムーブメントにあった見えない部位の高級感はすっかり影を潜めている。それでも現代のムーブメントよりはだいぶましである。6Rムーブメントよりは、56系ムーブメントのほうが断然高級感がある。

56ムーブメントの致命的弱点デイデイト故障

そんなスーパーな戦略モデルであったにもかかわらず、致命的な弱点を56系ムーブメントは抱えている。

それは、デイデイトクイックチェンジ機構の故障である。

このムーブメント最大の推しポイントは当時はまだ珍しかったデイデイト機能とそのクイックチェンジ機能であった。

その目玉の機能に不具合を抱えていたのである。

主な原因は、プラスチック部品の採用である。当時プラスチック部品の採用もあまりなかったはずなので、かなり攻めた仕様であったことは想像に難くない。

しかしながら、まだ、クイックチェンジ機構とプラスチック成型品へのノウハウが足りなかったのだろう。クイックチェンジさせるプラスチック部品が摩耗したり破損したりして、現在ではまともに動作するものはほとんどない。これはグランドセイコーでもキングセイコーでも同様である。

標準化による部品共通化のメリットが裏目に出た例であるといえる。

56系を中古で入手する際は覚えておこう。たとえ購入時に動作していてもいつかは破損する機構である。もうこれはどうにもならない。

直接的には、24時にデイデイトを切り替えるギアが作動しているときに、クイックチェンジの操作を行うとクイックチェンジ側のプラスチックギアが滑って、切り替えギアを保護する。

つまりもともとプラスチックギアを使用することでギアを滑らせる保護機構として組み込まれているのだ。

もしこれが不具合でなく、仕様であるなら、クイックチェンジギアは交換前提の消耗品であったといえる。

大抵はこれが摩耗しているか割れて動作不良となっている個体が多い。

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確かな品質の時計機構

そんな、弱点を補って余りある魅力がムーブメント時計機構部の品質である。

差別化のためハイビート化されたグランドセイコーなどと異なり、6振動に抑えられたロードマチックは耐久性も駆動時間も申し分ない。

言い方を変えればハイビートを前提としたフレーム設計の中にロービート機が組み込まれているので、設計的な余裕があるといえるのだ。これも専用ムーブメントではありえない仕様である。

巻き上げにも切り替え車が使用され、手巻き機構も装備されている。

これだけのムーブメントを安価に手に入れることは、現代では難しい。

こんな素敵なムーブメントを積んだ時計が、いまだに中古市場で激安で大量に出回っているのだからラッキーという他ない。

挑戦的なデザイン

ロードマチックの魅力はまだまだある。

それはグランドセイコーではとても許されない、チャレンジングなデザインである。

61系のアドバンまでとはいかないが、実に魅力的なデザインであふれている。カットガラス+カラーダイヤルは昭和を代表する傑作デザインであるといえる。

現在これをやろうとすると、どうしても品質を下げざるを得ないだろう。奇抜なデザインになるため、高級機に採用するにはリスクが大きすぎるのである。

しかし、この時期はいろんな背景があり一味違う。高度経済成長、クォーツショック、SEIKOノリノリ。ロードマチックのほかにも奇跡的なモデルがそろっているSEIKO黄金時代と言える。

全モデルコンプリートなんて無理なんじゃないかと思うくらいの種類が存在する。それどころか把握することさえ難しいだろう。

それをSEIKOはビジネスとして作っていたんだから、まさに狂気の沙汰であると感じている。

時計好きであれば一本は持っておきたいムーブメントである。

実は、亀戸精巧舎が開発した52系ロードマチックスペシャルもあるのだが、またの機会に書くこととする。

今回はここまでとする。本記事がステキな時計ライフの一助となれば幸いである。

それではまた。

まとめ

  • 圧倒的な流通量
  • 高いムーブメント品質
  • 挑戦的なデザイン

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