古いバイクだけど元気いっぱい
こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!
今回はSUZUKI TL1000Rがどんなバイクかを紹介したいと思う。
そうはいってもいまさらである。1998年発売モデルであるので、すでに発売から25年以上経つモデルだ。
さらに絶対的不人気バイクの素人インプレッションではあるが、もし参考にしていただければ幸いだ。
TL1000Rのココが良い
- 元気な高回転型リッターVツインエンジン
- フルアジャスタブル前後サスペンション
- 不思議な曲線とボリューミーな外観
- ツーリングに嬉しいフカフカの座面
- オイル缶1ℓ×3本以上の積載能力
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とにかく個性的なエンジン
何は無くともバイクといえば、圧倒的な高性能エンジンである。
TL1000Rにおいてもこのエンジンだけで購入価値があると言っても良い。
搭載されるエンジンは国内有数のリッタースポーツ90度Vツインエンジンだ。
出力は135PS/9500r.p.m.、レブリミットは11000r.p.m.。
7000r.p.m.あたりから当時より流行りのバルブタイミングを変えるシステムを装備。
高速域では走行風による給気加圧を行うラムエアシステムがついている。
ん?何がすごいの?普通じゃね?って思うかもしれない。
そう正直この程度のスペックは当時からさほど目立ったものではなかった。
なぜなら、同時期にあのGSX-1300RハヤブサやZX-12R、ZZRなど時速300kmのメガスポーツ全盛であったからだ。
しかしながら、バイクの魅力は数字だけではわからない。
TL1000Rのエンジンは、何よりもあまり目立たない渋い専用装備で差別化を図っているのだ。
標準で鍛造ピストンにツインインジェクション、マグネシウムヘッドにセミカムギアトレイン搭載。
当時最強クラスのVツインエンジンといっていい。
現在においても、ここまで豪華装備を搭載する国産エンジンは多くない。
実際に幾つかの装備は、同型後継機を搭載するSV1000SやVストロームでは省かれている。
その価格と性能から、当時いくつかのイタリアのバイクメーカにOEM供給されていたエンジンだ。
有名どころではビモータやガジバなどである。
前述のとおり、確かにエンジン性能という視点ではさほど目立った数字ではない。
しかし、リッターVツインスポーツエンジンというくくりでは、かなりの異彩を放つ存在であったことがわかる。
通常Vツインエンジンといえばハーレーのようなアメリカンバイクに搭載されているイメージである。
そして、日本エンジンの技術が光っているのは直列4気筒エンジンであった。
そのため、もはや絶滅といってもいい国産リッターVツインスポーツエンジンなのだ。
意外に裾野の広いエンジン
そして幸か不幸か、エンジン自体は同系のものが、いまだに生産されているため、パーツは手に入る。
ブレーキレバーやホイールなど車体はハヤブサと共通のものも多くある。
つまりスズキとしては、それだけ気合の入ったエンジンであり、代替のきかないエンジンであり、新規開発したくないエンジンであるといえる。
そんな曲者エンジンではあるが、そのフィーリングはとてもユーザーフレンドリーである。
セルを回しエンジンをかけた瞬間から、迫力ある排気音がVツインエンジンであることを主張してくる。
アイドリングは「ドドドドド」という感じである。
心なしか、線の細い感じもするが、鼓動感とか、味とか言ったものはあまり感じられない。
いつでもいけるぜといった静かな気合を感じる音だろう。
わずかにアクセルを開けて、クラッチをつなぐとその車体はスルッと前に出る。
低回転のエンジン音は「ドロロロロ」という感じの音を出しながら、やる気をにじませる。
アクセルをゆっくりと開け、加速に移っていく。
中回転域のエンジン音は「ドゥルルルル」という感じに微細な振動と共に腹に響き渡る。
このエンジンの最大の特徴であるが、ここのあたりの加速が最高に気持ちいい。
明確なトルクを感じながらグイグイとその車体を加速させていく。
高回転域まで引っ張っていくとバルブタイミングが切り替わり「ビィイイイイ」という感じに変わる。
このはじけるようなエンジンは、気持ちよく癖になる。
サウナに入らなくても整ってしまうほどである。
一般的に高回転が気持ちいい4気筒、中回転が気持ちいい2気筒、低回転が気持ちいい単気筒。
エンジンの作り方やセッティングによって味付けは異なるので、一概には言えないが、ざっくりそんな感じだ。
この高出力を発生するエンジンを包み込むガチガチのフレームは、強大なパワーを受け止めてもビクともしない。
補強の入ったサブフレームもへこたれることなくパワーを受け止めホイールへとつなぐ。
地面を蹴りだす力をぐっと受け止めるフルアジャスタブルのサスペンションダンパー。
スポーツモデルとしては重めの車体をはじけるように前に押しだす。
高速域は空気抵抗との戦い
あっという間にスピードを上げると、今度は迫り来る走行風。
その走行風を受け流す流線形の大きなカウル。
状態を低く構えると背中に沿って風が這っていくのを感じることができる。
一見無駄に見える大きなテールカウルも、後方の風の剥離を軽減し、走行抵抗を大きく抑える役割を果たす。
たかが空気抵抗と甘く見てはいけない。空気抵抗は速度2乗に比例して大きくなる。
高速域60km/h以上になると走行抵抗のほとんどは空気抵抗になるほどだ。
つまり速度を2倍にするためには4倍のエネルギー、速度を3倍にするためには9倍のエネルギーが必要となる。
あのハヤブサでさえ、開発のほとんどは空気抵抗との戦いであったに違いない。
実はツーリングも得意なんです
そんな玄人好みのスパルタンなTL1000Rの意外な一面が、そのツーリング性能である。
ふかふかの座面は長距離乗車を容易にしてくれる。
そして、シングルシートカウルは空洞となっていて、オイル缶3本を収納できるバイクにしては広大なスペース。
メットインにしなかったのが不思議なくらいだ。
峠道では中低回転でのVツインの排気音がライディングを盛り上げてくれる。
そんな数字だけでは語れない魅力いっぱいのバイクだ。
ちょいと褒めすぎたので、ここでは、TL1000Rの明確な弱点を明らかにしていく。
TL1000Rのココが勘弁して
- ガチガチのフレームと足回り
- 本気の前傾姿勢
- 燃えたぎる股下
- あまりに暗い前照灯
- 無骨なウィンカー
- 壊れると動かないレギュレートレクチファイア
しならないガチムチフレームと伝説のロータリーダンパー
まずはレースを意識したガチガチのフレームと足回り、本気の前傾姿勢は、街乗りとツーリングにを実に辛いものにする。
図太いアルミのツインスパーフレームは軽く強固ではある。
しかし、頑強なフレームは街乗りやツーリングバイクに必要な「いい感じにしなる」という動きがほとんどできない。
もし、これがスチールパイプフレームであれば、フレーム全体で実に心地いい乗り味を実現できるだろう。
アメリカンバイクがスチールフレームを用いるのは、見た目のほかにも乗り心地の面もあるのかと思う。
そのガチガチのフレームをフォローできる残りの構成部品はサスペンションとダンパーとタイヤぐらいのものだ。
しかし、サスペンションとダンパーもレース仕様のためガチガチである。
あの伝説のロータリーダンパーもそのガチガチ度合いに一役買っている。
ちなみに私はロータリーダンパーのノッチを左いっぱい、減衰力最弱にして乗車している。一般道ではこの程度で十分だろう。
もう少し、安定感が欲しい場合は、伸び側の減衰を2~3ノッチ右に締めてみるとよいだろう。
速度域や体重と相談しながらベストなセッティングを詰めていこう。
ちなみに速度域や走る道によって最適なセッティングは異なるので、深入りしないように気を付けよう。
サスセッティングの沼に入り込むと際限がなくなる。
理想的には速度域やブレーキ踏力によって、セッティングが可変されるサスペンションが必要だが、そんな装備はこのバイクにはない。
ささやかな最後の抵抗でタイヤくらいは柔らかいものを選ぼう。
個人的なおすすめはミシュラン製である。タイヤそのものが柔らかく、ライフも長い。
ガチガチのフレーム構造と本気の前傾姿勢で腕はパンパン、疲れ切った腰まわりで体に負担を強いてくる。
すると信号が赤に変わり、しばし休憩、、、、かと思いきや。
熱い!燃えるように熱いぞぉ!
今度は自慢の高圧縮エンジンが股下で焼けるような高熱を発生させる。
渋滞ともなると水温はグングン上昇し、ついには、冷却ファンが回り始め排気熱は乗員を直撃する。
実際のところ股下は動脈が通っておりここを直接熱されると熱は全身を回り、あっという間に熱中症になるので、夏場は要注意である。
喉元過ぎればというように体内に熱さを感じる感覚器官はない。汗も出ないまま熱中症になったこともある。
こればっかりはどうにもならない。
Vツインエンジンを縦置きしたら2番気筒はどうやっても股下になると思うので、焼けるように熱い。
乗ったことはないが、ドゥカティなどもLツインエンジンを積んでいるので同じくらい熱いのではないだろうか。
ヒートガードなどもあるようだが、なぜかのオプション装備。
何ならもう、保安部品もオプションにすればいいのにとすら思ってしまう。
もっと光を!
そうこうしているうちに、日も落ちてきて熱さも和らいできた。
ひとまず安心か、、、と思いきやまだまだこれからだ。
あまりに暗い前照灯は街灯のない道を照らし出してはくれない。
前に車が走っていれば辛うじて次のカーブの方向がわかる。
これの対策はヘッドライトを変えるしかない。
そして誰もが疑問に思うのが、ノーマルなのに違和感が半端ではないウィンカーだ。
ここばかりは、どう考えて設計したのか問いただしたい部分だ。
「レースベースだからウインカーとかどうせ外すよね」と思っていたに違いない。
しかし心配はいらない。立ちゴケさせた時に間違いなく破損するので、その際に埋め込みウィンカーに変更することになる。
純正品で修復するほうが高額だからだ。
弱点は電気系
最後に、レギュレートレクチファイアの故障だ。過去に2回故障したことがある。
症状としては、キーを回しても無反応となる。
ここについても放熱設計と充電回路設計をあらためさせてもらいたいものだ。
まあ、ここはGSX400Sでも同様であったので寿命の可能性もある。
レギュレートレクチファイアの対策品、強化品が社外品で販売されているので、同じ悩みを持っている人がいるということだ。
TL1000Rのココがチェックポイント
- 足つきとハンドル位置を確認
- ダンパー減衰を最適化
- バタフライバルブの清掃
- 排気漏れチェック
- オルタネーターとレギュレートレクチファイア動作確認
- ホイールダンパー交換
- 調整式ステアリングダンパーへの換装
- 国産バッテリーの搭載
もし これから、入手を考えている人がいるならポジションの確認をすべきである。
昨今のバイクにはないポジションだ。
特にシート高とハンドル位置は一般販売品とは思えない寸法である。
隠れた不人気の要因の一つであるとみている。
私はたまたま、身長185cm、股下約90cm、シャツの袖長さは約90cmという体であるので、大きな問題は出ていない。
しかしながら、それでもきついポジションだ。必ずまたがって確認しよう。
そして、実際購入した場合もすぐには思い通りにならない。
あれ?と思ったら確認しよう
あれ?曲がらないなと思ったら、ダンパーの減衰を抜いてみよう。
まずは最大まで抜いてみよう。驚くほどクルクル曲がるはずだ。
あれ?低速トルクがないな。燃費が悪いなと思ったら、バタフライバルブを清掃と排気漏れチェックをしてみよう。
発進トルクもエンストするほどのものではないし、燃費も15km/ℓは超えてくるはずだ。
どうしても低速トルクが足りない場合はドリブンスプロケットを2~3丁ほど増やしてみよう。
爆発的に加速がよくなる。ただし、ギア比の変更はスピードメータに影響するので注意すること。
オルタネータとレギュレートレクチファイアが正常動作であることも確認しよう。テスターがあれば可能だ。
あれ?アクセルオンでのドンつきがひどいなと思ったらホイールダンパを新品に変えてみよう。驚くほど気持ちよくなる。
バッテリーも必ず国産のものを使用しよう。始動性はもちろん全域でパワー感が段違いである。
詳しくわわからないが、廉価品とは放電の電流量が違う気がする。
TL1000Rの弱点は電気系であるので、ここをケチるとろくなことにならない。
あれ?なんかハンドルが重いな。Uターンしづらいなと思ったら、ステアリングダンパーを調整式のものに変えてみよう。
ライディングがより楽しくなるはずだ。
以上のように長所と短所が多くある特徴的なバイクである。
あとはどの程度まで耐久性があるかは未知数であるが、100,000kmは走っている人がいるので、心配はない。
このように、正しくメンテナンスされていれば、一般に言われるようなネガティブな側面はほとんどなくなる。
おかしいな?と思ったら今一度見直してみよう。
まとめ
- 特にエンジンが気持ちよい良いバイク
- Vストロームでも手に入る最高の国産Vツインエンジン
- 適切にメンテナンスを行えば元気いっぱい