ついに来たBMWあるある故障
- 作業難易度 :★(基本工具と気合)
- 事故時の危険度:★(手を切る可能性あり)
- 体感度 :★★★(動かないとイライラする)
- 作業時間目安 :20分程度
- 予算 :約10,000円(新品交換する場合)
- メンテ周期 :2〜4年毎(壊れたら交換)
- 注意点 :新品交換してもまた壊れる
こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!
今回は、ついに私のもとにも起きたドリンクホルダー故障を紹介する。
噂には聞いていた。聞いていたけれども「まさか自分が?」といったところだ。
この故障は、BMWひいてはE90あたりでは有名らしく、ネット上でもあらゆる人が同症状を訴えている。
症状としては、ただでさえ使いにくい位置に設置されたドリンクホルダーであるが、さらにプッシュしても出てこなくなるという故障だ。
通常はこのように収まっていて、使うときはワンプッシュでズルズルと引きだされてくるなんとも凝った仕様だ。
しかし、その日は突如訪れた。プッシュしても反応がないのだ。
ああ、これか、、、といったところだ。
LCIモデルのせいか、初めての故障らしい故障だ。まあ、運がいいだけかもしれないが。
さっそく分解してみよう
分解マニアの私としては、このようなトラブルは、分解のチャンスでもあるので嬉々として分解していく。
この件については、ネットをちょっと調べただけでいろいろ出てくるようだ。
特徴としては、どの事例も右側が壊れている。何やら、右側に問題があるようだ。
まあ、まずは内張りはがしを使用して、端から化粧板をはがしていく。
両端2点と中央2点の合計4点で化粧板がはめ込み固定されている。
化粧板を取り外すとドリンクホルダーの固定部が見えてくる。
しかし、なぜか、ここだけプラスネジが使われている。
人によってはトルクスネジ固定のようであるので、過去に一度交換されている可能性はある。
まあ、過去の経緯はいざともかく、このネジ2個を外して手前に引くことで、ドリンクホルダーは簡単に外すことができる。
まあ、こんな感じで出てきた。
なんか、貝殻から引き出したサザエみたいになっている。
よくもまあ、こんな形のものを作ったものだ。
きっと大変だったに違いない。
この状態では特に外観的な異常は見られなかったので、固定爪を外してバラバラにしていく。
ケースの左右側面で固定されている。
特にケースに固定ネジはないが、後方には固定用のピンが見える。
するとどうだろう。他の皆様とまったく同じ壊れ方をしているようだ。
側面カーブの穴の一部が見事に欠けている。
本来はT字の穴が開いていたのだろう。下側がかけている。
ちょいとマニアックなことを書くと、この破断面を観察することで、割れた原因を推測することができる。
状況からおおよその検討はつく。
ちなみに、この穴にはメジャーのようなゼンマイバネの先端が固定されている。
プッシュするとこちらのゼンマイバネの力でドリンクホルダーが出てくる構造だ。
ここが欠けることでゼンマイバネの力が利用できない状態となってしまっているのだ。
ここにゼンマイバネをかけなおせば、通常に動作するようになる。
ゼンマイバネの先端はこんな感じ。
実は、曲げて直そうとして折ってしまった。いい感じに曲げようとしてやってしまった。
バネ材なので、常温で90°以上曲げるとほぼ確実に折れる。
さらに接着は不可であることも確認した。まあ、潤滑用の油のせいもあるが、材質的なところも大きい。
ゼンマイバネを補修してみた
というわけで、先人たちの知恵を借りればよかったのだが、予習が足りず破壊してしまった。
そのため今回はゼンマイバネをリューターで削り込んで穴に再固定した。
割れた穴より大きめに削り込むことで、うまい具合に嵌めることができた。
先人の対策を見る限り、破損した穴にゼムクリップを挟む方法のほうが、スマートな方法であるとは思う。
ゼンマイバネの再組み込みを実施
組立方法は、ゼンマイバネをセットした後に、スライド部分をはめ込む。
そして、最後に上蓋をはめ込むとやりやすいだろう。
ドリンクホルダASSYを組立た状態。構造そのものはとても凝っている。
逆の手順で組み立てて、補修は完了である。
壊さないようにするためには?なぜ壊れたの?
さあ、いよいよ、本ブログの本題である。
結論を先に書くと、ドリンクホルダを壊さないためのただ一つの方法。
ドリンクホルダーを出しっぱなしにすることで、バネによる応力を抜くことである。
どういうことかというと、まずこの故障について、振り返ってみよう。
- 多くの人が同様の症状を経験している
- 右側(運転席側)ばかり壊れる
- 壊れる箇所はゼンマイバネの付け根の樹脂
上記より、私の見解としては、ケミカルクラック(ソルベントクラック)による破損であり、ドリンクホルダの故障は起こるべくして起きている。
ここで書いたケミカルクラックとは、応力の発生した(負荷の掛かった)樹脂部に油分などが付着することで、樹脂に微細クラックが発生し、強度が低下や破損する現象である。
本件のように即刻破損しない場合もあるので、現象としては経年劣化に似ているが、その速度を加速するような現象である。
今回の状態はゼンマイバネの応力がドリンクホルダの樹脂ケースにかかり、ゼンマイバネの潤滑油が作用していると推測される。
よって、何度新品に変えても、使用回数を控えても、ある日、同様にランダムに破損する。
強度計算、評価はされていたのか
当然、強度計算や設計、評価はされていたと考えるべきである。
BMWほどの会社が、その程度のことをしないはずがない。
左側のドリンクホルダの故障が少ないのは、およそ、ストレート形状のため、ギリギリで破損応力以下だったと推測する。
加えて、ソルベントクラックの強度や寿命への影響は、簡単には想定できない、容易に評価できない要素であるため、このような故障が発生する。
樹脂材料や油の種類にもよるが、ひどい時には強度が1/10以下にまで低下することがある。
とてもじゃないが構造材として使用できる強度ではない。
安全率(強度の余裕)が2倍や3程度では、足りないことがあり得るのだ。
そんな実に恐ろしい現象である。
さらに致命的な欠陥でなく、再現性に乏しいため、リコール対象とはなっていないが、このことはBMWも認知しているはずだ。
E90以降の車のドリンクホルダに同様の構造が利用されていなければ、認知、対策したと考えられる。
また、別途書くがリアウィンドウ落ちの不具合も同様にソルベントクラック要因であるとの見解である。
これもフロントウィンドウよりもリアウィンドウの不具合が圧倒的に多い。
まあ、今回はここまでとさせていただく。
次回はリアウィンドウ落ちについて書いていく予定だ。
まとめ
- ドリンクホルダーはいつか壊れる
- 運転席側が壊れる
- 予防方法はない