アンティーク時計の傷や汚れは個性
運良く気に入ったアンティーク時計と出会えたら、まずは可能な範囲で外観をチェックしてみよう。
まずは外観を眺めて、実際に身につけてしっくりくるか。ここはほとんど直感の世界であるが最も重要なポイントだ。
現物を見ることができない場合や試着不可の場合は全力で想像する。もしも違和感を感じる場合はその要因を洗い出す。
ここで、多くの場合、外観にキズや汚れ、劣化がある。それらは大小様々あるだろうが、アンティーク時計においては個性と捉えよう。
実用品である時計で何十年も前のものならそれらがあって当たり前だからである。むしろ現存していることに感謝である。
それでも完璧なものが欲しい場合は、新品を買うほうがずっと簡単だ。
以下に個性と考えられる内容、許容できる内容をまとめた。
- 風防にキズがある。
- ベルトが気に入らない。汚れている。
- ケースにキズがある。メッキが剥げている。
- 文字盤が汚れている、剥がれている。
- 針が取れている。
ただしケースが歪んでいる、割れているものはリスクが大きいので避けることをお勧めする。
それぞれ具体的に見ていく。
風防にキズがある
時計において風防は消耗品であるため、傷やスレがあることが普通である。
アンティーク時計ではアクリル風防が採用されていることが多い。
研磨か交換で対応でき、 非防水モデルであれば入手も比較的容易だ。
そのため、買うときにはあまり気にしないようにしよう。
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広告ベルトが気に入らない。汚れている
ベルトは交換前提で考えよう。
アンティーク品では、ほとんど革ベルト仕様でオリジナルのものは壊滅している。
ついているものが金属ベルトであれば、超音波洗浄機である程度綺麗にできる。
アンティーク時計は、ただでさえ汚れやキズが多いので、普通の人から見ればただの薄汚れた時計である。
そこを素敵に見せるコツは他を綺麗にすることだ。ベルトは革かステンレス無垢の綺麗なものに付け替えるだけで、アンティーク感が増す。
さらに着ている服も清潔感を意識すると全体的にバランスが取れる。
ケースにキズがある。メッキが剥げている
ステンレス無垢、金無垢のケースであれば、浅いキズは研磨である程度消すことができるので気にしない。
メッキ剥げの場合は気にしないか、再メッキで対応する。
また、金貼り、ゴールドフィルドというものがあり、分厚い金メッキのようなもので、20μm〜100μmあたりの記載がある。
ちなみに薄い金メッキ厚みが0.01μm程度であること、金箔厚みが0.1μm程度であることからその圧倒的な豪華さが伺える。
金時計が流行らないのもあるが、現代ではあまり見かけない仕様であるためアンティーク感がある。
文字盤が汚れている、剥がれている
これも防水機能のないアンティークではよくあるので「気にしない」、「状態の良い文字盤を根気よく探す」、「リダンと呼ばれる方法で再生する」のどれかで対応する。
リダンには数万円かかるがロレックスなど単価が高いものなら対応の選択肢に入ってくる。
最近の時計では塗料の改善と防水性能向上のため、劣化した文字盤はあまり見かけない。
琺瑯ダイヤル、エナメルダイヤルあたりは日焼けもなく美しい仕様であると思うが、割れがある場合がある。
これも高級仕様であるため現代ではあまり見かけない。
セイコーではプレサージュで琺瑯ダイヤルモデルがある。
針が取れている
たまにあるが、衝撃かその他理由で外れている。
外れているだけならはめ込みで修理可能。軸が折れている場合は、歯車交換となる。見送るかどうか微妙なラインである。
時計の針が12:00をささない場合も取れているのと同様だ。何かしらの理由で針が取れたか、ずれ込んだ痕跡である。
針が引っかかることなく24時間正常に回転するかリューズを回して確かめよう。
ケースが曲がっている、割れている(NG)
残念ながらこれだけは見送ろう。
明らかに通常とは違う使いかたをされている。
一見弱そうに見えるラグ(ベルトをつける根元)であるが、そうそう変形するものではない。
アンティーク時計の醍醐味はムーブメントの美しさであるが、使えないケースは流石にNGである。
一般的にムーブメントより外側にあるケースの方が数が少ないので入手はやや難しくなる。
どうしても補修する場合は、接着、ろう付け、削り出しによるパーツ製作となるだろう。部品取りには使える可能性がある。
それではまた。