ハイサイドはバイクの暴走挙動
ハイサイドとはバイクの暴走挙動のうちの一つだ。実際の動画についてはいろいろなところで紹介されているので、そちらを参考にしてもらいたい。
動画を見る限りは、カーブ出口付近でバイクが暴れだす。直後に突然ライダーが空中へ投げ出されている。
同時にバイクは空中に舞い上がり、ぐるぐると回転しながら、ライダーの後を追ってくる。ライダーにとってはとても恐ろしい挙動だ。
ではなぜそんなことが起こるのか、順に見ていこう。簡単に書くなら、後輪のタイヤがグリップを失った後に、急激にグリップが回復することによって起こる。
一般人について言えば、タイヤさえ滑らなければ発生することのない挙動である。
ハイサイドの起こる条件
- ハイグリップタイヤを装備している
- ハイパワーエンジンを搭載している
- 車体が進行方向を向いていない
- タイヤグリップの急激な回復
3番目は「?」と思うかもしれないが重要な条件だ。車体が進行方向を向いている状態で、後輪がグリップを失い、ホイールスピン状態から急激にグリップが回復した場合。基本的にはウィリー状態となるので、後輪ブレーキを踏むことで通常走行に回復できるからだ。
ハイグリップタイヤは文字通りハイグリップなタイヤであり、大きな負荷をかけてもグリップを失いにくい。しかし、ひとたびグリップを失えば、ハイグリップタイヤも通常のタイヤも関係ない。グリップ力ほぼ0である。
大抵は、アクセルの開け方が急であったり、路面状態が悪かったりするとグリップを失う。
タイヤが滑り出した状態で、アクセルを抜く、路面条件が変わるなどで、グリップは回復する。しかし、ハイグリップタイヤを履いているとスリップ時とグリップ時のグリップ力の変動が大きいことが弱点だ。
急激に回復したグリップは、車体とライダーを空中へ弾き飛ばす。
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ハイサイド発生のメカニズム
- カーブで車体をバンクさせコーナーリングに入る
- 遠心力に逆らいカーブを曲がる
- カーブで出口に向かいアクセルを開けて車体を立ち上げ始める
- 何らかの理由で後輪がグリップを失いホイールスピン
- 前輪はグリップが残っているので前輪を中心に車体が回転
- 後輪からスリップダウンしないようにカウンターを当てる
- 進行方向に対し車体は横を向いている
- 何らかの理由で後輪グリップが急回復する
- 急激なトルク回復で傾いた車体は直立しようと急激に起き上がる
- 同時にリアシャスペンションは沈む
- 起き上がった車体のスピードは早く一気に逆バンク
- 同時にリアサスペンションはのびあがる
- 車体とライダーを進行方向(逆バンク側)へ弾き飛ばす
- ライダーを投げ出した後、回転しながらバイクはライダーの後を追う。
プロライダーはすごい
バイクレースのコーナー出口で車体がブルブル震えているのをたまに見かける。あれは、コーナー出口でハイサイドしかけている車体をライダーが押さえ込んでいるのだ。あれだけのパワーとグリップを抑え込むのはもはや人間業ではない。
ハイサイドのエネルギーはバイクのエンジンパワーが形を変えて、バイクとライダーを弾き飛ばしているのだ。グリップ力があればあるほど、エンジンパワーがあればあるほどハイサイドのエネルギーは大きくなる。
ダートレースなどでドリフト走行してもハイサイドを起こさないのは、タイヤと路面のグリップ力が低いからだ。
ハイグリップタイヤだからと言って過信は禁物である。ハイグリップタイヤを使用すれば、バイクの運転が上手くなったように錯覚してしまうが、負荷をかけ過ぎれば、いつかグリップを失う限界が訪れる。
私もバイアスタイヤのダブルサスからラジアルタイヤのモノサスに乗り換えた時、こんなにもタイヤは食いつくのかと感動したことを覚えている。同時にハイグリップタイヤが滑り始める瞬間は素人では全く感じ取れない。
まとめ
- ハイサイドはハイグリップタイヤのスリップが引き金となる
- ハイグリップタイヤを過信しない
- 公道であっても条件が揃えばハイサイドは起こる