[ad01]

世界を驚かせた時計 SEIKO マーベル

世界に追いつけ、世界を追い越せ

こんにちは、今回はSEIKO、日本の時計界にとって重要な意味を持つマーベルについて書いていく。

何それ、おいしいの?という方もいるかもしれないが、少しでもその魅力を知っていただけたら幸いである。

時は1956年、メルボルンオリンピックが開催されたり、エルヴィス・プレスリーが大活躍しているような時代。

SEIKO初の独自設計品としてマーベルは発売された。

設計コンセプトは「狂わない、壊れない、美しい」とされた。

マーベル以前にもユニークやスーパーなどの時計も販売しているが、世界レベルにあるとは言い切れなかった。

スイスを見れば、多くの時計職人が優れた技術で、こだわりの時計を作り出していた。

アメリカを見れば、合理化による管理体制のもと高品質な時計を大量に製造していた。

当時は電子機器も、ましてやパソコンなど普及していなかった時代。

機械式時計は列車の運行管理にも使用されるほど、重要な意味を持っていた。

そんな中で、日本の時計は今一つ存在感を示せずにいた。

しかし、マーベルは当時の絶対王者であるスイスの時計にも対抗できるほどの完成度であった。

確かに、同時期のスイス製の普及レベル程度のモデルと比較すれば、マーベルのほうがよほど魅力的に見える。

SEIKOは長い歴史の積み重ねの結果、世界に誇れる時計メーカとして更なる成長を積み重ねていく。

現代における腕時計についていえば、その価値のほどんどはロマンであるため、熱いストーリーは重要な要素である。

そして、これだけのストーリーをまとっている時計は、そう多くはない。

思い出補正を差し引いても、そのムーブメントや細部の作りからは、作り手の熱い思いが伝わってくるようだ。

現代におけるマーベル

そんな魅力的なマーベルであるが、現代での立ち位置はどんなものだろうか。

結論としては、機械式時計として、ギリギリ実用に耐えうるものであるといえる。

まず、発売から70年近くたつため、基本的に機器としての寿命は終わっている。

しかし、個体の状態によっては実用精度(日差±10分以内)で稼働しているものも多くある。

個体数もある程度あるため、部品取りも不可能な状態ではない。

ただし、保守対象外となった機械式時計全般に言えることだが、1台のみ使用で毎日のように稼働できるような状態ではないだろう。

様子を見ながら全5本以上のローテーション入りは可といったところ。

ちなみに運動や汗をかく場面での使用は不可である。

あくまでドレスウォッチとしての使用が前提だ。

もう一つあるとすればサイズ感である。

13型と14型があるが、14型でケース外形34mm、厚み10mm程度、現代のサイズ感としてはかなり小さい。

一時、大型の時計が流行ったころはケース外形40mmを超える時計が大量に出回っていた。

知らない人から見れば、ケース外形34mmでは、大きめの女性用でないかと勘違いできるサイズだ。

腕周りが18cm以上ある人にとっては、まったくマッチしないだろう。

ドレスウォッチの現代のサイズ感としては、個人の腕周りによるが、36~38mm程度がバランスがよいと感じている。

[ad01]

広告

マーベルの仕様

  • ブランド名:セイコー(諏訪精工舎)
  • モデル名:マーベル
  • ムーブメント型式:マーベル
  • 振動数:18000回/h(5振動、2.5Hz)
  • 使用石数:17~21石
  • 発売年:1956年
  • ケース:14K金貼り、ステンレス無垢
  • 風防:アクリル
  • 防水仕様:なし
  • ラグ幅:約18mm

現代からすれば、別段特筆すべき点はない。

しかし、1956年製のモデルが、現代の基準から見ても、ほぼ合格点であるということが脅威である。

手巻き時計で21石というのは当時では多いほうであるだろう。

逆に金貼り仕様という豪華さは現代のものにはあまり見られない。

19石以上のモデルは、通称赤機械といわれる赤色のメッキ仕上げとなっている。

そんな、普通以上のスペックを持った機械式時計であるといえる。

マーベルのディティール

これまた、多くの種類が製造されたため、なんとも言えない。

しかし、前期型には「SEIKO MARVEL」のロゴの上にSマークが入っているものがある。

インデックスがアラビア文字のものなどは、12とSマークが近くなりごちゃごちゃしたりする。

当時は、デザインも含めて模索中であったといえるだろう。

最近のモデルではあまり見かけない部分でいうと、文字盤がドーム状になっている。

そして、それに合わせて分針と秒針も先端が湾曲している。

時針と分針の軸部分もドーム状になっていて複雑な形状だ。

ベゼルやケースの形状も美しさを意識しているだろう。

印刷技術や板金技術の関係もあるかもしれないが、実に手が込んでいる。

これがアンティーク時計の最大の魅力である。

加えて、自動巻きのない、手巻き時計はゼンマイの巻き上げ感が気持ちいい。

これは、切り替え機構を持つ手巻き機能付き自動巻き時計にはない感覚だ。

マーベルのムーブメント構造

マーベルのムーブメントの構造を見てみる。

後のクラウンのベースになるだけあって、実に美しいつくりとなっている。

基本的な構造は、現代にいたるまでどれもほとんど変わらない。

マーベルを分解組立できれば、SEIKOの手巻き時計はどれも同様に作業できる。

時計師の技術訓練で標準機であるクラウンが使われていたのもそれが理由であろう。

自動巻きやカレンダー付などにおいても、付加機能による構造が追加されただけで、メインの構造は変わらない。

もっと言ってしまうと、まじめに作ればどの機械式時計も同じような構造になる。

なぜなら基本構成要素が歯車とゼンマイのみで、人の腕の上という寸法制限があれば、選択肢はそう多くない。

3針であれば歯車の数の最小値は決まってしまうし、ギア比を考えれば、その歯数も決まってくる。

それを人の腕の上のサイズに収めようとすれば、まあこうなるだろう。

そのため、細部へのこだわりが、差別化ポイントとなる。

別途ページでは、分解・組み立てを紹介しているので興味のある方は参考にしてほしい。

まとめ

  • 世界レベルに追いついた初の国産時計
  • 設計コンセプトは狂わない、壊れない、美しい
  • 熱いストーリーをまとった稀有な時計
  • 個体によっては実用レベルの精度を保つ
  • 現代で見るとサイズ感はやや小さめ

[ad01]