燃費と加速、始動性が蘇る重要部品
- 作業難易度 :★★★(特に難しくないがめんどくさい)
- 事故時の危険度:★★ (火傷注意エンジンが冷えていることを確認すること)
- 体感度 :★★★(プラグの劣化が激しいほど効果を体感できる)
- 作業時間目安 :約30分
- 予算 :約6,000円(イリジウムプラグ4本)
- メンテ周期 :10000km(長寿命プラグの場合は50000km程度)
- 注意点 :イリジウムプラグ≠長寿命プラグなので注意
こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!
今回はスパークプラグの交換について書いていく。
スパークプラグはエンジンシリンダー内部でガソリンに火花点火する重要な部品だ。
点火する時の火花の強さやタイミングでエンジンの調子が大きく変わる。
調子のよいエンジンは「よい混合気」、「よい圧縮」、「よい点火」の条件がそろっている。
この中で点火の良し悪しにかかわる部品がスパークプラグとイグニッションコイルとバッテリーである。
そのため、スパークプラグは定期メンテナンスが欠かせない重要部品である。
交換時期としては、長寿命プラグでなければ10000kmごとの交換をお勧めする。
純正品は長寿命プラグであるので50000km程度は問題ないだろう。
スパークプラグはシリンダー内のガソリンの点火装置であり、各気筒ごとに設置されている。
そして、吸気、圧縮、燃焼、排気と常に過酷な環境にさらされている。
4気筒エンジンであれば、アイドリング600r.p.m.状態であっても各気筒300回/分は混合気の燃焼にさらされている。
その燃焼温度は2000℃以上、燃焼時圧力は30気圧以上にも達する。
やっとで排気行程にはいると次の瞬間には100℃以下の冷たい吸気が入ってくる。
そうかと思えば、再び10気圧以上に圧縮される。
最後にプラグの先端に1万~3万Vの電圧が負荷されて火花を飛ばす。
この繰り返しが高負荷時には10倍以上の回転数にもなる。
エンジンオイルと並んで、こんなにも過酷な環境にあるスパークプラグを交換しないなど考えられない。
プラグの劣化は、燃費の悪化、レスポンスの悪化、始動性の悪化などを招くことになる。
特に始動性の悪化はバッテリー負荷を増大させ、最悪はバッテリー上がりによる走行不能に陥る。
エンジン不調の原因は混合気、圧縮、点火のどれかが原因の場合が多いが、最も疑うべきは点火である。
プラグの劣化、バッテリーの劣化、イグニッションコイルの劣化などの原因が考えられる。
それだけ、プラグの管理は、エンジンコンディションの維持において、重要項目のうちの一つである。
スパークプラグってどこにあるの?
通常スパークプラグは各エンジンシリンダーの上側にある。
4気筒エンジンであれば4本、6気筒エンジンであれば6本、イグニッションコイルと共に設置されているのが普通である。
E90 320iであれば、ボンネットを開けてBMWと書いてあるプラスチックエンジンカバーの下あたりだ。
この時、エンジン本体の向かって右側に見える管は吸気管である。
エアクリーナーを通った空気は、この吸気管を通ってエンジンシリンダー内部へと流入していく。
今回の交換対象であるスパークプラグにアクセスするため、順次、周囲の部品を外していく。
面倒くさいが、特に難しい作業ではないので、一つ一つ確実に作業していけば素人でも問題なく作業可能だ。
エアコンフィルター周りの部品を外す
ボンネット奥側にある幅方向に長い黒いケースがエアコンフィルターである。
ここを通って、車室内に外気を取り込んでいる。
このフィルターで、外気の中にあるゴミや虫、チリ、埃などを取り除く。
車室内空気の清浄機能を担うので、花粉症の人には特に重要な部品である。
まずは、エアコンフィルター手前にあるケーブルホルダーを引きだす。
これは特にねじなどで固定されてはいないので、引っ張れば簡単にとれる。
この時点で保持されているケーブルそのものは取れないのでホルダーを引き出して、外しておくだけでよい。
対角8mm工具でエアコンフィルタを外す
対角8mmと書かれたソケットレンチでボルトを6本外すとエアコンフィルタが取り外しできる。
エアコンフィルタの固定部は、周囲6か所にあるので、エンジンルーム内に落下させないよう注意しよう。
このエアコンフィルターも汚れが激しい部分である。
気になる人はこの機会にエアコンフィルターも交換しておこう。
今回は、エアコンフィルターの準備がないので交換はしない。
エアコンフィルター BMW 1シリーズ E82 E87 E88 3シリーズ E90 E91 E92 E93 X1 E84 アルピナ B3 (116i 118i 120i 130i 135i 320i 323i 325i 330i 330xi 335i 18i 20i 25i 28i) FP8430 MANN 純正フィルターメーカー オリジナルブランド 脱臭活性炭 ポリフェノール配合(三層構造)裏返すとこんな感じ。
結構ドロドロに汚れている。近いうち交換したいと思う。
周囲の固定爪を外すとエアコンフィルターがカバーから外れるので、新品と交換するだけだ。
エアコンフィルターの左右に謎の黒いカバーがあるのでこちらも外しておく。
見えづらいが外側と手前側にフックがあるのでこちらを引っ張って外す。
謎の黒いカバーが外れた状態
電源関係の部品の入ったケースのようだ。
上に見える長方形の穴は外気取り込み用の穴である。
エアコンフィルタ下のトレイを外す
エアコンフィールターの固定されていたトレイの左右端にゴムが引っかかっているので、こちらも外しておく。
正面向かって左側に温度センサと思われるものもついているので、こちらのコネクタケーブルも引き抜いておこう。
ゴム部品の引っ掛け部右側
引っ張れば、ずらすことができる。
ゴム部品の引っ掛け部左側。
こちらも同様に引っ張ればずらすことができる。
およそ外気温センサと思われる部品。
ケーブルコネクタ側の固定用の爪を押し込んで引き抜けば抜ける。
写真下側に見えるのが固定用レバー。
これを押し込みながらコネクタを引っ張る。
センサに接続されたケーブルコネクタが外れた状態。
コネクタケーブルはトレイに固定されているので忘れずに外しておこう。
これでトレイを固定するものは何もないので、手前側に引き抜く。
先ほどのケーブルホルダと異なり、トレイは取り外すことができる。
エアコンフィルターを固定していたトレイが外れた状態。
だいぶすっきりしてエンジンルーム全体が見えるようになった。
なんでこんなに奥にエンジンを設置するんだよといいたくなる。
しかし、それは分解する側の都合であって、車的には奥にエンジンがあったほうが良い。
フロントミッドシップレイアウトであるので、重要物であるエンジンを車体中央に寄せている。
これにより、車とトライバーが一体になったかのような運転中の気持ちよさにつながっている。
車体先端の重量を減らすことで回頭性が向上する。
6気筒モデルに比べて4気筒モデルのほうが、フロントの入りが軽く感じる理由がこれである。
直列6気筒エンジンはそのデメリットとしてエンジンの前後長が長いのだ。
特に3シリーズは直列6気筒やV型8気筒エンジンが載る寸法のエンジンルーム設計である。
3シリーズの4気筒エンジンの回頭性の良さは、その設計的余裕、言い換えればエンジンルーム寸法の無駄からきている。
専用設計の車体であれば、エンジンルームを切り詰めて車室内を拡大するはずだ。
エンジンルームが広いことで、放熱も整備も容易になるため、本モデルの隠れた長所である。
ちなみに長すぎる直列6気筒オフセットさせて、前後長を縮めたものがV型6気筒である。
そう、重心を下げるだけなら直列エンジンを寝かせれば済む話である。
蛇足だが、水平対向4気筒エンジンをフロントミッドシップに搭載した車の運動性能は高い。
それは、重量物であるエンジンの重心を極限まで下げ、前後長を詰めてミッドシップレイアウトしたためである。
スバルのインプレッサやポルシェなどが採用しているレイアウトだ。
そう書くと、水平対向エンジンがいいことづくめのように感じるが、実際には吸排気、オイル循環、排熱など設計の難しさもあるため一概には言えない。
いよいよエンジンヘッドカバーを外す
やっとでトレイを外すとエンジンヘッドカバー全体が見えてきた。
オイルキャップを外してからカバーを上に引き出してカバーを外す。
この時、斜めに設置された補強用の棒が邪魔だが、なんとか引き出すことができる。
あとは知恵の輪的にプラスチックのカバーを引き出していく
裏返すとわかるが2点がはめ込みになっているだけの単純構造である。
この辺はメンテンナンスする側としてはありがたい。
こんなにもメンテナンスしやすい車種の作業工賃が日本車よりも高額なのは謎である。
そうそう、忘れずにオイルキャップを締めておこう。
異物が入ったら大変である。
イグニッションコイルの取り外し
ここまでくれば、あと少しでスパークプラグにたどり着くはずだ。
ここで見えているのは、イグニッションコイル。
こいつが高電圧を発生させ、スパークプラグの先端で火花を作り出す。
実はこれも消耗品なので、走行距離が50000kmを超えているようなら交換しよう。
1本5,000円くらいで購入できるだろう。
イグニッションコイルの頭にレバーがついているので、こいつを起こしてコネクタを外す。
コネクタが外れたら、イグニッションコイルを引きずり出す。
なかなか硬いので、引き出すときは、レバー根元軸を持って、ニンジンを引っ張り出すつもりで臨もう。
ニンジンみたいにイグニッションコイルを引き抜く
4個セット BMW E81 E82 E87 E88 E46 E90 E91 E92 E93 E60 E61 F07 F10 F11 F18 E63 E64 F06 F12 F13 E65 E66 E67 E68 F01 F02 F03 F04 X1 E84 X3 E83 F25 X5 E53 E70 X6 E71 E72 Z4 E85 E86 E89/BOSCH イグニッションコイル ダイレクトコイル新品(1213-7594-937/0221-504-470)やっとでイグニッションコイルが抜けた。
いうまでもないが、4気筒なのでこれを4本分繰り返す。6気筒なら6回繰り返す。
ちなみにイグニッションコイルは以前に社外品に交換したので、写真と異なるものが出てきても問題ない。
イグニッションコイルを引き抜いた穴の奥底にあるのがスパークプラグだ。
エクステンションを付けたプラグ用ソケットで反時計回りに回し、緩めていく。
東日製作所 トーニチ プレセット形トルクレンチ 差込角9.53 全長257.5mm
ソケットサイズは16mmを使用した。
なめたり、破損したりすると走行不能になるので確実に作業しよう。
新旧スパークプラグ比較
デンソープラグ VK20 4本セット下が外したスパークプラグ、上が新品のスパークプラグ。
取り外したものは、いい感じにきつね色に焼けているが、先端はかなりの摩耗が確認できた。
以前交換したNGK製イリジウムプラグ、なんとイリジウムプラグだが通常寿命品であるとのこと。
長寿命タイプと勘違いしていて、40000kmほど走ったところで、エンジンに異常を感じたため、今回交換に踏み切った次第である。
ちなみに純正はNGK製の長寿命イリジウムであるが、大人の事情か一般には販売されていない。
そのため、今回はデンソー製の長寿命イリジウムに交換する。
1本1,100~1,700円程度だろう。
スパークプラグの取り付けは、落下させないようにして入れて、ネジを破損しないよう慎重に締めこむ。
最初はレンチを使わずに、指でネジ溝にはまったことを感じながら締め付けよう。
最後の締め込みはトルクレンチを使用して締めこむこと。
締め付けすぎればエンジンヘッドを破損する。
緩すぎれば、振動で緩み、最悪圧縮漏れでエンジンの停止となる。
ネジ類の締め付けトルクは非常に重要であるので、DIYメンテを実施する場合は、トルクレンチを使おう。
スパークプラグ締め付けトルク:25N・m
最後まで油断禁物しっかり密封しよう
再びイグニッションコイルを押し込んでいく。
しっかり押しこんだら、コネクタを接続して、レバーを倒したら完了だ。
残りの部品も逆の手順で組み立てていく。
以上でスパークプラグの交換は完了である。
今回は長寿命品を使用したので、次は50000km後くらいにイグニッションコイルと一緒に交換くらいだ。
効果のほどはというと、最高に気持ちいいエンジンフィールとなった。
こんなにも気持ちよかったのかと再認識するほどである。
加速も燃費も元通りである。しかし、フィーリングが蘇ったのが一番大きい。
もっと早くにやればよかったと思う。これがメンテナンスの醍醐味である。
知らずに劣化しているものは身の回りに多くあるということを再認識した次第である。
今後もメンテナンス情報を伝えていくのでよろしく、それではまた。
まとめ
- 良い点火のためにスパークプラグの交換は必要
- 長寿命プラグか通常寿命プラグかを確認する
- プラグの締め付けはトルク管理が重要
- イグニッションコイル、バッテリー電圧も点火に関係する