地味だけど大事な吸気系のメンテナンス
- 作業難易度 :★★(特に難しくない)
- 事故時の危険度:★ (火傷注意エンジンが冷えていることを確認すること)
- 体感度 :★★(気持ちの問題)
- 作業時間目安 :約30分
- 予算 :約4,000円(クリーナー代)
- メンテ周期 :20000km(なんとなく気が向いたらやる)
- 注意点 :純正エアクリーナの場合は交換が簡単
こんにちは、今日も元気にメンテナンスしていこう!
今回はエアクリーナーとバタフライバルブの清掃について書いていく。
このメンテナンスについては、特に大きな効果を感じられないかもしれないが、アイドリングが不安定になったら試してみよう。
エアクリーナーはエンジンシリンダー内に入る空気をきれいにする空気清浄機だ。
バタフライバルブはエンジンシリンダー内に入る空気量を調節する蛇口のようなものだ。
特にバタフライバルブは、基本的にアクセルペダルと連動して動く。
ただし、BMW E90はエンジン回転数2500回転/分付近でバタフライバルブが全開になる仕様だ。
低回転域はバタフライバルブの開閉、高回転域は吸排気バルブの開閉を制御することで、シリンダー内の空気量を調節している。
これはバルブトロニックシステムと名付けられていて、実に画期的なシステムである。
従来はバタフライバルブの開閉のみで、流路内抵抗を調整して空気量を調節していた。
これが自動車用エンジンでは当たり前であったのだ。
そこに一石を投じたのがバルブトロニックシステムである。
バタフライバルブだけでなく、エンジンにはシリンダーの出入り口にもバルブがついている。
混合気をシリンダー内に入れるときは入口側の吸気バルブが開く。
圧縮、爆発しているときは全バルブが閉まっている。
そして排気行程では出口側の排気バルブが開く。
この吸排気バルブを繊細に制御することで、吸排気量を制御し、バタフライバルブを排したというのである。
しかし、実際には低回転における吸排気バルブでの流量制御が難しいためか、結局バタフライバルブはついている。
そして、大抵の場合バタフライバルブが原因で不調をきたすのは低回転、主にアイドリング付近である。
これは、アイドリング中にわずかにバタフライバルブが開いている状態になるが、その隙間に汚れがたまると詰まったような状態となる。
すると吸気量が不安定となり、アイドリングがばらついたりする。
低流量時のアイドリング制御がいかに繊細で難しいかを伺い知ることができる。
最近の優秀なコンピューターは、空気量や混合気を調整し、その影響を最小限に抑えている。
ただし、アクセル開度と吸気量が合わなくなってくるので、結果として加速や燃費の悪化などが懸念される。
まあ、あまり神経質になる必要はなく、ある程度走ったら吸気系のメンテナンスを考えてみよう。
エンジンルーム右側にある黒い箱がエアクリーナーボックス
いつも通り前置きが長くなったが、作業に入っていこう。
ボンネットを開けるといつもの風景がみえてくる。
こんなことろにもBMWのバッジをつけるとは恐れ入る。
車両前面のキドニーグリルからダクトを通して右側にあるエアクリーナーボックスへと空気が流れる。
走行中はある程度ここに走行圧力がかかるので、ラムエア効果も若干はあるだろう。
BMWと書いてあるカバーを外すと冷却水の配管が見える。
直6、V8まで収まるエンジンルームに4気筒エンジンを搭載なのでフロント側がスカスカである。
同時にエンジン搭載位置がかなり車室側によっていることがわかる。
これが4気筒である320iの回頭性向上に大いに貢献していることは想像に難くない。
この重量バランスの良さが4気筒にしかないの最大の長所である。
重量バランスとは前後の重量配分が50:50であることだけではない。
重量物の配置がより回転軸に近く、より低いことがそれ以上に重要である。
重量バランスだけ見れば、直列多気筒エンジンを縦置きにする理由はない。
しかし、通常は悲しいことにエンジンを横置きにしても、その空いたスペースは車室に割り当てられることになる。
つまり、ラインナップに直列6気筒エンジンやV8エンジンがあるからこそ、このスーパーフロントミッドシップレイアウトが実現しているのだ。
続いてエアクリーナボックスを外していこう。右にボルトが2本見えるのでこれを外していく。
ボルトの脱落には注意しよう。
一度エンジンルーム内に部品を落とすとアンダーカバーを外すことになる可能性がある。
固定ボルトを外したら、エアクリーナーボックスを上に引き上げてひっくり返す。
なぜかひっくり返すとネジが見えるので、外してエアクリーナボックスを開けていく。
エアクリーナーボックスを開けた様子。なんかすごい形状である。
できる限り容積を稼ごうとした跡がうかがえる。
さらに圧力に負けないように補強も入っている。
エアクリーナボックスに存在感あるヒダヒダのものがエアクリーナーである。
写真はK&Nのものに変更してある。
これは布にオイルを染み込ませたもので、洗浄して再利用可能なサステナブルなやつである。
特に性能が向上するわけでもないし空気清浄力はノーマルのほうが良いだろう。
清掃するのもめんどくさいし、純正品の交換が最も理にかなっている。
純正品を購入しても数千円である。K&N優一のメリットはランニングコストが安いことだ。
空気抵抗がどうのと宣伝されているが、吸排気系で最も大きな空気抵抗はバタフライバルブである。
アクセルなどそうそう全開にはしないので、純正品が最適解である。
固定バンドを振るめてエアクリーナーを外した様子。
純正の場合は付け替えて完了。K&Nエアフィルターの場合は洗浄、オイル塗布で再組付けする。
今回はバタフライバルブも清掃するので、エアクリーナーボックスの下半分も外していく。
これがバタフライバルブだ。閉まっているのでただの壁にしか見えないが、軸を中心に回転して開いていく。
バタフライバルブの下と上にわずかに隙間が開いている。
これがアイドリング時の空気吸入の隙間である。
おわかりいただけただろうか。これだけの空気抵抗に対して、エアクリーナの空気抵抗など誤差である。
そして隙間のあたりに汚れが見える。黒くなっているのはモリブデングリスの可能性もあるので注意。
今回は明らかに汚れなので、清掃していく。
この汚れがひどくなると、調整範囲を逸脱してアイドリングがばらつくことになる。
バタフライバルブ軸にはグリスがあるはずなので、軸にクリーナーをかけないように注意。
今回使ったケミカルはこちら、ヤマハのインジェクションクリーナである。
いろいろこれ系のケミカルはあるが、インジェクション使用可能の記載のあるものは数が少ない。
ヤマハ(YAMAHA) ヤマルーブ スーパーインジェクション&キャブクリーナー 500ml 90793-40074
隙間を狙って噴射。
しばらく待って、アイドリングしてを繰り返す。
バイクの時は劇的に低回転域の調子が戻り、燃費もよくなった。
今回は特に劇的な効果は感じられなかったが、バタフライバルブはかなり汚れていたので、気持ち的はよい。
定期的にメンテナンスしていきたい内容である。
組み立ては逆の手順で行って、作業完了である。
このBMW E90は基本的なメンテナンスが実にやりやすい良い車である。
正しくメンテナンスすれば、とても合理的かつ経済的な車である。
外車だからという理由で工賃を吊り上げるような業者と付き合わなければ、その良さが伝わるはずだ。
中にはリーズナブルな工賃で作業してくれる業者も数多くある。そんな業者と末永くお付き合いしたい。
今後もメンテナンス情報を伝えていくのでよろしく、それではまた。
まとめ
- エアクリーナとバタフライバルブの空気抵抗部分を清掃
- 低回転時の流量制御は繊細
- アイドリングの安定と燃費向上の可能性がある