応力腐食割れとは3つの要因が作用する
こんにちは、今回も技術士目指してキーワード学習を行う。
技術士の2次試験時期は7月の海の日頃であるので、計画的な学習が必要だ。
しかし、私は心の弱い人間であるため、まったく学習が進んでいない。
一歩でも前に進めるよう、一つずつ地道に書いていくこととする。
今回は応力腐食割れについて書いてみる。
応力不足割れとは、環境による材質の脆化に応力が加わることによって、材料強度が著しく低下する現象である。
その結果、材料強度が想定された発生応力以下となり、不具合の要因となり得る。
そして、応力腐食割れの発生要因としては以下3つが挙げられる。
- 材質要因
- 応力要因
- 環境要因
この要因のうち一つを排除できれば、応力腐食割れの発生を防ぐことができる。
応力腐食割れの恐怖
何だ簡単じゃないか、何をそんなに恐れる必要があるのか。
そう思うかもしれない。しかし、実際に事前に予測し、設計に反映することはかなり難しい。
その理由を以下に挙げる。
- 3つそろわないと発生しないため見落としがちになる。
- 3つとはいうが、どれも排除が難しい場合がある。
- 脆化の影響がどのくらいか知ることが難しい。
- 再現性が乏しい場合がある。
- クリープや繰り返し応力が絡むと即時再現しない場合がある。
確かに3つもの要因がそろわないと発生しない。
さらに1つ排除できれば対策できるということで、一見すると容易に思える。
しかし、実際には必要応力とその他条件より選べる材料は限られる。
加えて、環境については、変えることが難しく、予測できるものと予測しきれないものとがある。
そして、肝心の脆化の影響が見積もれなければ、発生させてはいけない現象となる。
極めつけは、開発段階の評価でも再現することが難しい場合もあるということだ。
実例としては、樹脂材料(材質)というのは、油分や溶剤に触れる(環境)と劣化しやすい。
そして、油分や溶剤による脆化により、材料強度は1/10程度になることがある。
ABSやポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチックの材料強度は60MPa程度だ。
それが、1/10の6MPaになったとしたら強度設計などできないに等しい(応力)。
さらにクリープや繰り返し応力を加味すると結論としては「樹脂材料に油分を触れさせてはならない」となる。
実際に車の樹脂製ドリンクホルダーの動作部分にゼンマイと潤滑用グリスが使われており、応力部の破損が絶えないものとなっている。
※この事例は別ページで紹介しているので、もし興味のある方は見ていただきたい。
これはまさに、樹脂材料がグリスにより脆化し、ゼンマイ応力のクリープと繰り返し応力に耐えられなくなった結果である。
ただし、すぐには再現しないため、経年劣化による故障の範囲に含まれるものと思われる。
しかしながら、これが致命的な故障につながる場合はその限りではないので、注意する必要がある。
もし、シートベルトなどの部品であれば、たとえ発生が製造から5年後であっても許されるものではない。
難しい故障解析
このように、気を付けていても発生してしまう場合や許容せざるを得ない場合も出てくるだろう。
応力腐食割れの特徴として発生を確認することが難しいことも挙げられる。
基本的にはその破断面を観察することで、応力による破断かクリープなのか繰り返し応力なのか、応力腐食割れ(材料脆化)なのかがわかる。
そうはいっても実際は、複合的に起こることのほうが多いだろう。
そのため、破断面のほとんどは複雑な破断面を有することになる。
ポイントとしては破断面の起点に注目して観察することである。
起点に応力が集中して、いろいろな破損が進んでいる場合は複合的な破断面となる。
しかし、破断面の起点だけはごまかしがきかないので、慎重に観察しよう。
走査顕微鏡を使って、プロが観察しても判断を間違えることがあるくらい難しい。
そのような状況をさらに難しくしている要因は、その再現性の低さだろう。
前述した車のドリンクホルダーの破損も発生するタイミングがまちまちである様子である。
環境の再現が難しい上に同様の環境を準備しても同様の現象が同様のタイミングで発生するかどうかはランダムであったりする。
場合によっては難しい対策
応力腐食割れの対策としては、前述したように3つの要因を揃えないことに尽きる。
しかしながら、ドリンクホルダーの事例でいえばかなり難しいだろう。
- 材料:樹脂材料を変更する→コスト的に難しい
- 応力:応力をなくす→構造的に難しい
- 環境:グリスをなくす→動作的に難しい
できる可能性があるとすれば、根本的な構造を変えて応力をなくすかグリス不要とする。
または、グリスかプラスチックを変更し相性の良いものを使用するくらいだろう。
今回はここまでとする。今後も根気強くキーワード学習を続けていく。
まとめ
- 応力腐食割れは、材質、応力、環境の3つの要因がそろうことで発生する
- どれか一つの要因を排除すれば対策することができる
- 現象解析が難しく対策が難しい場合がある